ドラムのマイキング|ライブでの本数・配置・回線表の書き方【完全ガイド】
ドラムのマイキングは、本数と種類が決まれば配置は自動的に決まるのが基本です。ライブハウスの持ち時間20〜30分のリハで音を仕上げるには、「本数」「マイク型番」「回線割り当て」を事前にPAへ共有しておくのが最短ルート。この記事では、3本・5本・7本・フルセットの構成別に、配置のコツ・回線表への書き方・かぶりとハウリング対策まで、現場で通用する知識を1本にまとめました。
結論:ドラムのマイキングは「本数」で決まる
ドラムのマイキングは、使うマイクの本数で構成が決まります。ライブハウスの規模とドラマーのこだわりで、次の4段階から選ぶのが標準です。
| 本数 | 構成 | 主な会場・シーン |
|---|---|---|
| 3本 | Kick / Snare / OH×1(またはOH×2のみ) | 小規模ライブハウス・弾き語り対バン・軽音の学園祭 |
| 5本 | Kick / Snare / OH×2 / HH | 中規模ライブハウス・スタンダードなバンドライブ |
| 7本 | Kick / Snare / HH / Tom×2 / OH×2 | ライブハウスの標準・多くのバンドがこの構成 |
| フル(10本〜) | + Snare(下) / Kick(In/Out) / Tom各個 / Ambient | 大規模ライブ・レコーディング・こだわり派 |
各マイクの役割と配置のコツ
7本構成を基準に、各マイクの役割と配置のコツを解説します。定番のマイク型番も併記していますが、会場に置いてあるものを使うのが基本です。持込は「絶対にこれ」というこだわりがあるときだけ相談しましょう。
① キック(バスドラム)
- 定番マイク:AKG D6・SHURE β52A・SENNHEISER e902(低域特化のダイナミック)
- 配置:フロントヘッドに穴が開いていれば、マイクを内側に入れてビーターに向ける
- アタック重視:ビーター側に近づける(10〜15cm)
- 低音重視:ドラム内部のシェル中央付近に離して置く
② スネアドラム
- 定番マイク:SHURE SM57(世界標準のダイナミック)
- 配置:ヘッドから3〜5cm・リムの内側に向けて斜め45度
- 裏面(スナッピー側):フルセットではSM57をもう1本、下から立てて音の抜けを補強
③ ハイハット(HH)
- 定番マイク:SHURE SM81・AKG C451(小型コンデンサ)
- 配置:シンバルのエッジから15cm・上向きにセット
- 注意:スネアの音がかぶりやすいので、スネアから離れる向きに立てる
④ タム(Tom×2)
- 定番マイク:SENNHEISER e604・AUDIX D2/D4(クリップオン式が便利)
- 配置:各タムのヘッドから3〜5cm・リムに斜め45度
- クリップ式のメリット:スタンドが減り、ドラマーの視界がすっきりする
⑤ オーバーヘッド(OH×2)
- 定番マイク:AKG C414・NEUMANN KM184・RODE NT5(コンデンサ)
- 配置:ドラマーの頭上1〜2m、左右対称にペア
- 役割:シンバル全体+ドラムセットの全景を録る。ハウリング耐性が低いので、返し音量に注意
セット図での書き方——マイクの位置を明記する
セット図でドラムのマイクを描くとき、次の3点だけ押さえておけば通じます。
- マイクの位置:Kick / Snare / HH / Tom各個 / OHの位置を上から見た図で示す
- マイクの型番:こだわりがあれば「Snare: SM57指定」などと備考に書く(なければPA任せ)
- スタンドの要否:クリップ式(e604など)なら「スタンド不要」と書き添える
ドラム単体のマイクの詳細をセット図に描き込むと図が複雑になるので、ドラムセットは「Dr」と1つのブロックで描き、マイク配置は備考または別紙にまとめるのがきれいです。バンド全体の配置はバンド編成別セット図(3/4/5人)を参考にしてください。
▲ このように、バンド全体のセット図ではドラムは1ブロックで示し、詳細なマイク位置は別紙またはPA表の備考欄に書きます。
回線表(インプットリスト)への書き方
マイキングが決まったら、回線表(インプットリスト)に落とし込みます。ドラムはCh1〜Ch7を使うのが一般的な順番です。
| Ch | 楽器 | マイク | スタンド |
|---|---|---|---|
| 1 | Kick | β52A / D6 | ショートブーム |
| 2 | Snare Top | SM57 | ショートブーム |
| 3 | Snare Btm(フルのみ) | SM57 | ショートブーム(低) |
| 4 | HH | SM81 | ブーム |
| 5 | Tom 1 | e604(クリップ) | — |
| 6 | Tom 2 | e604(クリップ) | — |
| 7 | OH-L | C414 | ブーム(高) |
| 8 | OH-R | C414 | ブーム(高) |
ドラム以外のパート(ベース・ギター・キーボード・ボーカル)はCh9以降に続けます。回線表の全体的な書き方はインプットリスト(回線表)の書き方を参照してください。
ライブとレコーディングでのマイキングの違い
同じドラムでもライブとレコーディングではマイキングの考え方が違います。
| 観点 | ライブ | レコーディング |
|---|---|---|
| 本数 | 3〜7本が主流 | 10〜16本+Ambient |
| マイクの種類 | ダイナミック中心(ハウリング耐性優先) | コンデンサ多用(音質優先) |
| 優先事項 | ハウリングと転換速度 | 各パートの分離とかぶりの少なさ |
| OHの役割 | シンバル全体を拾う「補助」 | ドラム全景を録る「主役」 |
| Ambientマイク | 使わない | 会場感を出すために使う |
ライブハウスに「レコーディング向けの本数(12本など)」で頼むと、リハ時間が足りずに他バンドに迷惑がかかります。ライブでは本数は必要最低限+こだわりのある1〜2本の持込が現実解です。
かぶりとハウリングを避けるコツ
ドラムはマイクが多い分、他楽器の音のかぶりとハウリングが起きやすいパートです。以下を意識するだけで大幅に改善します。
① マイクの指向性を活かす
- スネアマイク(SM57)はスネア以外の音源に背を向けるように立てる(HHのかぶり回避)
- タムマイクはタムのヘッド真上ではなく斜め——シンバルのかぶりを減らせる
② OHの位置と返しの関係
- コンデンサのOHはハウリング耐性が低い——返しの音量を上げすぎない
- ドラマーの返しは足元よりバックライン近くに置くとOHへの回り込みが減る
③ 回線数の削減
- 使わないマイクのフェーダーは下げる——本番中に使わないマイクは卓側でカット
- タムをあまり叩かない曲順のバンドならTomマイクを省略してもOK
ハウリング全般の対策はハウリング(フィードバック)とはにまとめています。
会場PAとの事前相談——伝えるべき3点
提出物(PA表・セット図・回線表・セトリ)と一緒に、次の3点を会場PAに伝えると当日がスムーズです。
- ドラムマイキングの本数——「5本でお願いします」「7本フルでお願いします」など
- 持込マイクの有無——「スネアだけ自前のSM57を使いたい」など、あれば事前告知
- クリップ式タムマイクの使用——「タムはe604のクリップ式を使いたい」(スタンドの本数が変わる)
ドラムマイキング準備チェックリスト
- ☐ ドラムマイクの本数を決めた(3本 / 5本 / 7本 / フル)
- ☐ 持込マイクがあればPA表と備考に記載
- ☐ セット図に「Dr」ブロックを配置(詳細マイキングは別紙)
- ☐ 回線表にCh1〜Ch7(8)まで割当済み
- ☐ タムクリップ式(e604等)の場合、スタンドの本数が減ることをPAへ共有
- ☐ ドラマーの返しの位置と音量希望を明記