キーボード・同期(オケ)のライブ接続とセット図|ステレオ/モノラルの決め方・DIの本数・回線表の書き方
バンドにキーボードや同期(オケ)が入ると、セット図と回線表に書くことが一気に増えます。結論はシンプルで、PAに伝えるべきは「何回線で送るか(=DIが何本要るか)」。キーボードは迷ったらモノラル1回線、同期は「オケは客席へ・クリックは演者だけ」が鉄則です。この記事では、接続の基本、ステレオ/モノラルの判断基準、同期の方式比較、そして上位記事がほぼ触れていないセット図・回線表への書き方(記入例つき)まで、やさしく解説します。
結論:PAに伝えるのは「回線数」——これだけ決めれば大丈夫
- キーボードはDIで「ライン送り」——アンプではなくDI経由でPA卓へ。モノラルなら1回線・ステレオなら2回線
- 迷ったらモノラルでOK——小〜中規模のライブハウスや対バン形式では、モノラルが実務の主流(理由は後述)
- 同期(オケ)は2回線+クリックは卓に送らない——オケはL/Rの2回線でPAへ、クリックは演者のイヤホンだけに返す
- すべて事前連絡——「Key=DI×2、同期=DI×2、クリックは送りません、電源2口ください」まで伝われば、当日は置くだけ
キーボードの接続の基本——アンプではなくDIで「ライン送り」
ギターやベースと違い、キーボードは専用アンプを使わずPA卓に直接送る(ライン送り)のがライブハウスの標準です。流れはこうです。
- キーボードのOUTPUT(標準フォン端子)→ シールドケーブル → DI → PA卓
- OUTPUT端子は多くの機種で「L/MONO」と「R」の2つ。L/MONOだけに挿せばモノラル(1回線)、両方挿せばステレオ(2回線)
- 自分の音は返し(モニター)から聴く。キーボードアンプの持込は基本不要
演者が用意するのはシールドケーブル(モノラルなら1本・ステレオなら2本)と電源まわり。会場のシールドを借りられることも多いですが、長さや本数が読めないので持参が安心です。サスティンペダルや譜面台も忘れずに。
ステレオかモノラルか——迷ったらモノラルでOK
キーボーディストが一度は悩むのがこれ。判断基準を表にしました。
| 状況 | おすすめ | 理由 |
|---|---|---|
| 対バン形式・小〜中規模の会場 | モノラル(1回線) | 卓のチャンネル数が限られ、複数バンドで回線を使い回すため。1回線で済むと転換も速い |
| ピアノ音色がメインで広がりが欲しい | ステレオ希望を事前相談 | ピアノ・エレピ・パッドはステレオの恩恵が大きい。ただし判断は会場に委ねる |
| シンセリード・単音フレーズ中心 | モノラル | ステレオにする恩恵がほぼない |
| ワンマン・ホール規模 | ステレオ相談OK | 回線に余裕があり、PAもステレオで作りやすい |
「ステレオのほうが音がいいのでは?」と思いがちですが、実務では次の事情があります。
- 卓のチャンネルは有限——小さめの会場は16ch程度のことも。キーボード1台をステレオにすると、それだけで2ch消費する
- 客席では差が出にくい——スピーカーのL/Rの中央で聴ける客はわずか。端の席ではステレオの広がりはほぼ感じられず、揺れ系エフェクトはむしろ不自然に聴こえることも
- 音色はモノラルで確認しておく——ステレオ前提の音作りをモノラルでまとめると位相の関係で印象が変わる音色がある。スタジオ練習で一度モノラル出しを試しておくと本番で慌てない
キーボードが2台以上になる場合は、台数×回線数で膨らみます(例:2台ステレオ=4回線)。小型ミキサーでまとめて2回線(またはモノラル1回線)に集約して送るのが定番のスマート解。この場合は「Key×2→持込ミキサー→DI×2」のように経路ごと伝えましょう。
同期(オケ)の基本——「オケは客席へ、クリックは演者だけ」
同期(どうき)とは、あらかじめ用意した音源(=オケ。ストリングス、シンセ、コーラスなど)をライブで再生し、それに合わせて生演奏するスタイル。メンバーにいないパートを鳴らせるので、音源の再現度が一気に上がります。
同期には2つの音が登場します。この区別がすべての出発点です。
| 音 | 誰が聴く? | 送り先 |
|---|---|---|
| オケ(同期音源) | お客さん | DI経由でPA卓へ(L/Rの2回線が基本) |
| クリック(ガイドのメトロノーム) | 演者だけ(主にドラマー) | イヤホンへ。卓には送らない |
テンポの基準になるドラマーがクリックをイヤホン(イヤモニ)で聴き、他のメンバーはドラムに合わせる——これが最小構成。クリックが客席に流れる事故だけは絶対に避けたいので、回線表に「クリックは卓に送りません」と書いておくと確実です。
同期の方式と必要機材——3パターン比較
| 方式 | 必要機材 | 安定性 | 向いている人 |
|---|---|---|---|
| プレイヤーのL/R分け | スマホ/プレイヤー+分岐ケーブル | △ | まず試したい人。L=オケ(モノ)・R=クリックを書き出し、Lだけ卓へ。スマホは機内モード必須 |
| MTR(マルチトラックレコーダー) | MTR本体 | ◎ | 定番。オケ出力とクリック出力を物理的に分けられ、PCより落ちにくい |
| PC+DAW | ノートPC+4出力以上のオーディオインターフェース | ○ | 本格派。1-2chをオケ→DI×2、3-4chをクリック→イヤホンに割り当て。曲中のテンポチェンジも自由 |
- 複数人でクリックを聴くならヘッドホンアンプ(分配・個別音量調整)を足す
- 再生ボタンを誰が押すか(ドラマー・キーボーディストが多い)を決めておく
- 止まったときの復帰ルール(曲頭からやり直す/同期を切って続ける)をバンド内で決めておくと本番に強い
セット図・回線表への書き方【記入例】
ここまで決まれば、書くことは明確です。セット図に書くのはこの5点。
- キーボードの位置と「Key:DI×2(ステレオ)」または「DI×1(モノ)」
- 同期機材の位置(ドラム脇が定番)と「同期:PC+IF(DI×2)」のように機材と回線数
- 要電源の場所と口数(Key足元・同期機材の脇など)
- キーボードスタンドの持込/レンタル(会場にX型スタンドがあるかは要確認)
- クリック用イヤホンを使う人(例:Dr=クリックあり)
回線表(インプットリスト)はこのように書きます。
| CH | パート | マイク/DI | 備考 |
|---|---|---|---|
| 9 | Key L | DI | ステレオ・要電源1口 |
| 10 | Key R | DI | |
| 11 | 同期 L | DI | PC+オーディオIFから。クリックは卓に送りません |
| 12 | 同期 R | DI | 操作=Dr。要電源1口 |
回線表全体の書き方はインプットリスト(回線表)の書き方を、キーボード入り編成の立ち位置はバンド編成別セット図をどうぞ。
事前連絡チェックリスト——これで当日は「置くだけ」
キーボード・同期がいる日は、ブッキング担当かPAに遅くともライブの1週間前までにこう伝えましょう。
- キーボード:台数と回線数(例:1台・ステレオDI×2)
- 同期:あり/方式(例:PC+IF)/回線数(DI×2)
- クリックは演者のみ・卓には送らない
- 電源:口数と場所(例:Key足元1口・ドラム脇1口)
- キーボードスタンド・同期機材を置く台:持込か借りるか
- 再生の操作担当(例:Dr)
- 万一に備えたバックアップ音源(スマホ等)の有無
あとはリハ(サウンドチェック)で「オケの返し量」と「クリックの音量」を確認すれば準備完了。セット図と回線表が揃っていれば、PAとのやり取りは驚くほどスムーズになります。