無料でつくる
用語集

ライブの「返し」とは?モニターの仕組み・頼み方・イヤモニの返しとの違い・セット図への書き方【完全ガイド】

公開:2026年07月17日 ・ 運営:LOCAL POWER株式会社(セット図くん)

ライブハウスのリハで必ず聞く「返し(かえし)」。結論から言うと、ライブの返しとは、ステージ上の演者が自分たちの演奏や歌を聞くためのスピーカー(モニタースピーカー)のことです。この記事では、転がし・ウェッジ・サイドフィルなど種類と呼び方の整理、ライブの音の仕組みである中音・外音、リハでの頼み方の実例フレーズとパート別の定番音量は引き算で作る原則本番中に返しが崩れたときの伝え方、ライブハウスとホール/フェスの違い、やってはいけない扱い方、そしてセット図への書き方まで、初ライブでも困らないように解説します。

返しの希望も、セット図に描いて伝わる
セット図くんは返し(ウェッジ)の記号を内蔵。足元に置くだけで「どこに何面欲しいか」が一目で伝わります。登録不要・完全無料。
最速セット図作成ツールを無料で利用する

結論:返しとは「演者が自分たちの音を聞くためのスピーカー」

返しとは、ステージ上の演者に向けて音を出すスピーカー(モニタースピーカー)のこと。客席向けのメインスピーカーはステージより前を向いているため、ステージ上では自分の歌や演奏がほとんど聞こえません。そこで、演者の足元に置いたスピーカーから必要な音を「返して」もらう——これが「返し」の語源です。

▲ 黒い台形が返し(ウェッジモニター)。ステージ最前の床に置かれ、演者に向けて音を「返す」。

返しが適切だと、自分の声の音程・メンバーとのリズムが取りやすくなり、演奏の質が大きく上がります。「返しを制する者はライブを制する」と言われるほど重要な存在です。

呼び方の整理:転がし・ウェッジ・モニター…ぜんぶ同じ

現場ではいろいろな呼び方が飛び交いますが、次はすべて同じものを指します。

呼び方由来
返し演者に音を「返す」から
モニター/ステージモニター演奏を監視(モニター)する音の意
転がし(ころがし)床に転がすように置くから
ウェッジくさび形(wedge)の形状から
フロア/フットモニター床・足元に置くから
フォールドバック英語の foldback(折り返し)から

似ているけれど別物なのが、ステージ両脇から鳴らす大型のサイドフィルと、イヤホン型のイヤモニ(IEM)。イヤモニとの違いは後述します。

返し(モニター)の種類——用途で使い分ける4タイプ

ライブハウスでは「返し=床の転がし」で通じますが、現場が大きくなるほど複数のモニター機材を組み合わせて使います。主要な4タイプを整理します。

種類置き場所向いている用途
フロアモニター(転がし)演者の足元(床)ライブハウスの標準。全パート共通
サイドフィルステージ両袖(下手/上手側)広いステージで全体に音を広げる補助用
イヤモニ(IEM)耳(インイヤー)自分専用ミックスが必要な人・ハウリング対策
パーソナルモニター手元のミキサー+自分の返し各自が自分でバランスを調整したい現場

ライブハウスの対バンで「返しを何面」と数える単位は、フロアモニターの台数のこと。ボーカルの前に1面、ドラム前に1面、下手・上手のギター前にそれぞれ1面…と足していきます。1〜4面が一般的で、多くても6面前後が目安です。

💡 「別々の音を出せる系統(ミックスバス)」の数は、返しの台数とは別。例えば「4面の返しで2系統(ボーカル系とリズム隊系)」というように、卓の性能で決まります。イヤモニは基本1人1系統です。

「中音」と「外音」——ライブの音は2つある

返しを理解する鍵が、中音(なかおと)と外音(そとおと)という考え方です。

中音外音
どこの音?ステージ上で鳴っている音客席に届く音
中身アンプの生音+生ドラム+返しPAがメインスピーカーで作るミックス
誰のため?演者(演奏のしやすさ)お客さん(聞こえの良さ)
⚠️ 中音を欲張って大きくすると、外音が濁ります。ステージ上の爆音がマイクに回り込み、PAが客席の音を作れなくなるためです。返しは「必要な音だけを最小限」が鉄則。

リハ(サウンドチェック)での頼み方

リハでは、PAから「返し、何かほしい音ありますか?」と聞かれます。ここで固まらないための実例フレーズがこちら。

何を返してもらうかは、パート別の定番があります。迷ったらこの表のとおりでOK。

パート返してもらう定番理由
ボーカル自分の声音程が取れないと歌えない。最優先
ギターボーカル(+自分の音少し)自分の音はアンプから聞こえる
ベースボーカル・キックリズム隊のロック用
ドラムボーカル・上物(ギター等)生音で聞こえない歌と上物を補う
キーボード自分の音・ボーカルキーボードは生音が無いため
💡 コツは3つ。①欲張らない(全部返すと逆に聞こえない)②「誰の・何の音を・大きく/小さく」と具体的に伝える③迷ったら「ボーカルだけください」で十分成立します。

音量の基本原則——返しは「引き算」で作る

初心者ほど「聞こえないから上げてください」を連発しがちですが、これはドツボにハマる典型パターンです。ステージ上で何かを上げると、他のマイクにも回り込んで他の音が濁り、結局「もっと上げてください」の悪循環になります。

プロの現場で共有されている原則は次のとおり。

⚠️ 中音を大きくしすぎると外音(客席の音)が濁ります。ステージから漏れた爆音がマイクに回り込み、PAが客席のミックスを作れなくなるためです。返しは「聞こえるギリギリの小ささ」がプロ流。

返しが「濁る/聞こえない」根本原因——バンドの音作りと帯域整理

返しは音量調整だけの問題ではありません。ステージ上でバンド全体の音がぶつかっていると、いくら返しを上げても目的の音が浮かび上がってきません。この現象を音響ではマスキング(大きな音が近い帯域の小さな音を覆い隠す現象)と呼びます。

帯域ぶつかりやすい音返しで起きること
低域(〜200Hz)キック × ベースどちらも「ドン」と聞こえるだけで音程が取れない
中域(200Hz〜2kHz)ボーカル × ギター(歪み)歌のフレーズがギターのコードに埋もれる
高域(2kHz〜)シンバル × ボーカルの子音ハイハットがうるさく歌の輪郭がぼやける

この場合、返しの音量調整より先に、音源側で帯域を整理する方が効果的です。プロの現場で行われている定番アプローチは次の3つ。

⚠️ 「返しを上げて」の前に、「自分の楽器の帯域が他を隠していないか」を疑うのがバンド全体の音抜けを良くする近道。返しは音作りの結果であって、原因ではありません。

ハウリングと返しの関係

「キーン」というハウリングは、返しの音がマイクに回り込み、増幅がループすることで起きます。返しの音量を上げるほどリスクは上がるので、「聞こえないから上げて」を繰り返すより、中音全体(アンプ音量)を下げる方が解決することも多いです。マイクを返しのスピーカーに向けるのもNG。詳しい仕組みと対策はハウリング(フィードバック)とはを参照。

返し3面でも、イヤモニ併用でも、記号を置くだけ
セット図くんはウェッジの記号を内蔵。返しの位置と数を図で伝えれば、リハがそのぶん速く進みます。
最速セット図作成ツールを無料で利用する

本番中に返しが崩れたら——ジェスチャーで伝える

本番中に「返しが聞こえない」と気付いても、演奏を止めるわけにはいきません。PAはステージ上の演者を常に見ていますので、次のようなシンプルなジェスチャーで通じます。

ジェスチャー意味
自分を指さす→上を指す自分の返しを上げてください
自分を指さす→下を指す自分の返しを下げてください
マイクを指さす→上を指すマイク(=ボーカル)を上げて
耳を指す→首を横に振る返しが聞こえない
OKサイン(🆗)ちょうどいい、ありがとう

曲間の一瞬でも伝えられるので、事前にメンバーとPAに「本番中こういう合図します」と一言共有しておくと安心です。逆に、事前リハと違う音量に本番でいきなり変えたくなっても、PAはリハの設定を基準に作っています。大きく変えたい時は必ずジェスチャーで相談を。

会場規模による返しの違い

返しの構成は会場規模で大きく変わります。自分がこれから出る現場のイメージを持っておくと、事前準備がスムーズです。

規模返しの構成ポイント
小規模ライブハウス(〜100人)フロアモニター 1〜3面系統は1〜2つ。ボーカル中心のシンプル構成
中規模ライブハウス(100〜500人)フロアモニター 4〜6面パートごとに独立系統。事前セット図が効く
ホール(500〜2000人)フロアモニター+サイドフィルステージが広く、袖のサイドフィルが必須
フェス・大型野外イヤモニ+サイドフィル+転がしハウリング対策でIEM主流。転換時間が短くセット図必須

大きい現場ほど「事前にどんな返しをどこに欲しいか」を図で共有する重要性が上がります。とくにフェスは転換時間が短いので、口頭説明の余裕がありません。

返しの扱いNG集(現場マナー)

イヤモニの返しとは——スピーカーからイヤホンへ

イヤモニの返しとは、返し(モニター)の音を床のスピーカーではなくイヤホンで聞く方式のこと。イヤモニはインイヤーモニター(IEM)の略で、テレビの音楽番組やフェスでアーティストが耳につけている「あれ」です。仕組みは、PA卓で作ったモニター用ミックスを送信機からワイヤレス(または有線)で腰のレシーバーへ送り、イヤホンで聞く——つまり「返し」という役割は同じで、出口がスピーカーかイヤホンかの違いです。

床の返し(転がし)イヤモニの返し(IEM)
聞こえ方ステージの生音と混ざる遮音され自分専用ミックスだけが聞こえる
ハウリング音量を上げるほどリスク増スピーカーが無いのでほぼ起きない
中音への影響面数が増えるほど中音が大きくなる中音を下げられ、外音がクリアになる
導入ハードル会場の機材でOK・持ち物不要機材の持込みと事前準備・慣れが必要
主な現場ライブハウスの標準プロの現場・フェス・同期モノのバンド

音の安定性ではイヤモニが圧倒的ですが、ライブハウスの対バンでは床の返しが基本。イヤモニは専用機材と「耳をふさいだ状態で演奏する慣れ」が必要です。導入するなら、まずはクリックを聞くドラマーの有線イヤモニから始めるのが定番で、ボーカルだけイヤモニ+他は転がし、という併用も普通に行われます。

⚠️ イヤモニの片耳外しに注意。「歓声も聞きたいから」と片耳だけ外すと、外した耳を守ろうとして音量を上げがちになり、耳を痛める原因になります。歓声はアンビエントマイク(客席の音を拾うマイク)をミックスに混ぜてもらうのが正解です。

イヤモニを使う場合は、その旨をセット図に明記しましょう(「Vo=イヤモニ持込・ワイヤレス」など。ワイヤレスなら周波数帯の記載も)。機材構成やセット図の書き方の詳細はIEM(イヤモニ)とはにまとめています。

セット図での返しの書き方

返しの希望は、口頭よりもセット図に描いて渡すのが確実です。書き方は3ステップ。

▲ 4ピースの基本形。ドラムは奥中央、ギター上手・ベース下手、返し(黒い台形)は各自の足元へ。

ステージの向き(上手・下手)を揃えて描けば、PAはリハ前に返しの配置を準備できます。セット図全体の書き方はセット図の作り方・書き方【完全ガイド】をどうぞ。

返しの位置も数も、置くだけで伝わる
セット図くんならウェッジ記号を足元に置くだけ。PDF・共有リンクでそのまま提出できます。
最速セット図作成ツールを無料で利用する
登録不要・完全無料

よくある質問(FAQ)

ライブの「返し」とは何ですか?
ライブの返しとは、ステージ上の演者が自分たちの演奏や歌を聞くためのモニタースピーカーのこと。客席向けのメインスピーカーはステージより前を向いているため、そのままではステージ上で自分の音がほとんど聞こえません。演者の足元や耳元へ音を「返して」もらうことから、この呼び方がついています。
返しとモニターは同じものですか?
同じものです。返し・モニター・ステージモニター・転がし・ウェッジ・フロアモニター・フットモニター・フォールドバックは、すべて演者用のモニタースピーカーを指す呼び方です。
サイドフィルと転がし(フロアモニター)は何が違うのですか?
置き場所と用途が違います。転がしは演者の足元に置く小型モニターで、ライブハウスの標準構成。サイドフィルはステージ両袖に置く大型スピーカーで、広いステージ全体に音を届ける補助用です。ホールやフェスでは両方を組み合わせて使います。
返しからは何を出してもらうのが普通ですか?
最優先はボーカル(歌)です。ギターやベースは自分の音がアンプから聞こえるため、返しにはボーカルを中心に、足りない音だけを最小限もらうのが定番。迷ったら「ボーカルください」だけで十分成立します。
返しは何面まで頼めますか?
ライブハウスなら1〜4面が一般的で、多くても6面前後が上限の目安です。会場の機材によって上限が違うので、5面以上欲しい場合はブッキング時に確認しましょう。ボーカル前・ドラム前・下手ギター前・上手ギター前の4面あれば通常のバンド編成は十分カバーできます。
演奏中に返しが聞こえなくなったらどうすればいいですか?
曲間にPAへ口頭かジェスチャーで伝えます。自分を指さしてから上を指す(=自分の返しを上げて)、耳を指して首を横に振る(=聞こえない)など、シンプルな合図で通じます。事前にメンバー間で「本番中こういう合図する」と共有しておくと安心です。
返しを上げても聞こえません。どうすれば?
上げるのではなく、逆に「大きすぎる音を下げる」を試してください。返しの音量を上げるほどハウリングと外音の濁りが増え、結局聞こえなくなる悪循環に。ボーカルが聞こえないならギターを絞ってもらう——この「引き算」がプロの現場の基本です。
イヤモニの返しとは何ですか?
返し(モニター)の音を床のスピーカーではなくイヤホンで聞く方式のことです。イヤモニ=インイヤーモニター(IEM)の略で、PA卓で作ったモニターミックスをワイヤレスまたは有線で耳元に送ります。役割は床の返しと同じで、出口がスピーカーかイヤホンかの違いです。
イヤモニと返しはどちらがいいですか?
イヤモニは遮音性が高く自分専用のミックスを安定して聞け、ハウリングもほぼ起きませんが、専用機材と慣れが必要です。ライブハウスの対バンイベントでは床の返しが基本。イヤモニを使う場合はセット図に「イヤモニ使用(持込)」と明記しましょう。
イヤモニをつけているのに床の返しも置くのはなぜ?
併用が普通だからです。ボーカルだけイヤモニで他のメンバーは転がし、という構成や、イヤモニが外れた・電池が切れたときの保険として床の返しを残す構成がよく使われます。低音の体感(空気の振動)を補うためにあえて転がしを鳴らすこともあります。
中音(なかおと)と外音(そとおと)の違いは?
中音はステージ上で鳴っている音(アンプの生音+生ドラム+返し)で、演者が演奏するために聞く音。外音は客席に届く音で、PAがメインスピーカーで作るミックス。中音を欲張って大きくすると外音が濁るため、返しは必要最小限が鉄則です。
返しの音量を上げても目的の音が浮かんでこないのはなぜ?
マスキング(近い帯域の音が互いを覆い隠す現象)が原因のことが多いです。歌が聞こえないならギターの中域を、リズムが分からないならベースの低域を、シンバルがうるさいならドラマーが叩く力を——というように、まずは音源側で帯域を整理する方が返しの音抜けは劇的に改善します。
返しが1面しか使えない狭いステージではどうすればいいですか?
ボーカルの前に1面置き、返しはボーカルだけに絞るのが基本です。他のパートは自分のアンプとステージ上の生音でカバー。返しに全員の音を詰め込もうとするとかえって何も聞こえなくなります。
リハで返しは何と言えばPAに伝わりますか?
「◯◯の返しに、△△を大きく(小さく)ください」の型で伝えれば通じます。例:「ボーカルの返しに、歌をもう少しください」「ドラムの返しに、ベース少し絞ってください」。曖昧な「なんか変です」「いい感じに」はPAが動けないので避けましょう。