アンコールとは?ライブの意味・仕組み・ダブルアンコール・予定調和と言われる理由
「アンコール」——ライブの本編が終わった後、客席から起こる拍手と「アンコール!」の掛け声で始まる、あの時間のこと。この記事では、アンコールの意味と語源、実際の仕組みと流れ、ダブルアンコール(Wアンコール)が起きるかを決める3つの要素、そして「実は最初から決まっている」と言われる予定調和の裏側、アンコールをやらないアーティストが増えている背景まで、演者側と観客側の両方の目線で解説します。
結論:アンコールとは?意味と語源
アンコールとは、ライブや演奏会の本編終了後、観客の拍手や掛け声に応えて出演者が追加で行う演奏(またはその演奏を求める掛け声)のことです。ライブ/音楽業界では省略して「EN」(Encoreの頭2文字)と書かれ、2回目のアンコールは「W-EN(ダブルアンコール、Wアンコール)」と呼ばれます。
語源はフランス語のencore(アンコール)=「もう一度」。18世紀初頭のイギリスで、聴衆が気に入った曲に対して「encore!」と叫び、演奏者が繰り返すのが習慣化したとされます。おもしろいのは、本場フランスでは今は encore ではなく bis(ビス)と叫ぶのが一般的で、「アンコール」は英語圏&日本に定着した言い回しになっています。
ライブでのアンコールの流れ
ライブハウス・ホール・アリーナのどの規模でも、アンコールの基本的な流れは共通です。表で押さえておきましょう。
| タイミング | ステージ側/客席側で起きること |
|---|---|
| ①本編ラスト | 最後の曲を演奏。MCで「ありがとうございました!」など締めの挨拶 |
| ②退場 | メンバーがステージ袖へ退場。会場のBGM(SE)が流れ、照明が暗転またはハーフに |
| ③観客の拍手・掛け声 | 拍手と「アンコール!」のコール。手拍子が揃うと呼び戻す圧が強まる |
| ④再登場 | 数分後、メンバーが再度ステージへ。「アンコールありがとう!」のMCから始めるのが定番 |
| ⑤EN曲を演奏 | 1〜3曲程度。人気曲や、本編に組み込めなかった新曲を披露することが多い |
| ⑥最終退場 | メンバーが写真撮影・お辞儀・場合によっては物販アピールをして退場 |
ライブハウスなどの小規模会場では、③④のタイムラグが数十秒〜1分程度と短めです。アリーナ規模になると、衣装替えや機材準備のため2〜5分の拍手待ちがあるのが普通です。
ダブルアンコール(Wアンコール)とは?実施を決める3要素
ダブルアンコール(W-EN)=2回目のアンコールのこと。1回目のアンコールが終わってメンバーが退場した後、それでも拍手が鳴り止まないときに、追加で再登場して演奏するものです。1回目より発生確率は下がり、実施されるかどうかはその日の会場・演者・時間の3要素で決まります。
| 要素 | 実施されやすい条件 |
|---|---|
| 会場の熱量 | 拍手・手拍子が数分続いて途切れない/観客が総立ちで叫び続けている |
| アーティストの体力 | ツアー最終日や地元凱旋など、演者側にも「もう1曲やりたい」余力があるとき |
| 時間制限(会場側の音止め) | これが最も厳格。大型会場では音止め時間(例:22時)が分単位で決められており、超過すると次回の借用に響くペナルティがある |
ダブルアンコールが実現しなかったとしても、それは「愛が足りない」わけではなく、時間・体力・会場ルールの制約によることがほとんどです。とくにドームやアリーナは、時間ジャストで音を止めなければ次回使えないという契約の中で運営されています。
「アンコールは予定調和」と言われる理由
近年、「ライブの1回目アンコールは事前に組み込まれた演出」と語られることが増えました。実際、大型ライブの現場では次のような仕込みが行われているのが普通です。
- セットリスト(構成表)にEN曲が最初から入っている:香盤表にも「EN 3分/MC」まで書かれる
- アンコール用の衣装が別に用意されている:本編終了→袖で着替え→再登場、が段取りに含まれる
- 照明・映像・特効の演出プログラムがEN込みで組まれている:ステージ演出は完全に事前設計
- 「アンコールが起こらないと困る」演出:暗転を続けて客電を上げないなど、「まだ終わってません」の合図が出る
これは「騙し」ではなく、ライブ全体を「ひとつの作品」として設計する演出上の必然です。アンコール込みの構成で、映像・照明・セットリストが緻密に組まれているからこそ、あのクライマックスの盛り上がりが再現されます。予定調和と分かっていても、その瞬間に立ち会う体験そのものが「ライブ」だとも言えます。
アンコールをやらないアーティストが増えている
一方で、「アンコールはやらない」と表明するアーティストも年々増えています。あいみょん・Vaundy・SUPER BEAVER・マカロニえんぴつなど若手勢が本編のみで終える構成を採用しているほか、T.M.Revolutionの西川貴教は「アンコールは義務じゃない」と発言して大きな反響を呼びました。KinKi Kidsの堂本光一も「呼ばれなければ出ない、当たり前にやるものではない」との主旨の発言をしています。
アンコールをしない主な理由は次のとおりです。
- 本編で完結した作品として提示したい:セットリストの流れを分断させたくない
- 惰性化した「儀式」への疑問:拍手ありきの再登場はライブの意味が薄い
- タイパ・終演時間の明確化:観客の交通機関を考えて、終演時刻を守る
- 本編の熱量を最大化する:EN想定の余力を残さず、本編に全部込める
「アンコールなし」は失礼でも手抜きでもなく、ライブ設計上の1つの意思表示です。もし観に行ったライブでアンコールが無かったとしても、それは今のシーンでは珍しくありません。
観客側のマナー:拍手・掛け声・退場のタイミング
- 本編終了直後の退場は避ける:アンコールがあるかは数分待たないと分からない。片付けは客電が付いてから
- 拍手・手拍子は揃える:バラバラな拍手より、リズムのある手拍子のほうが呼び戻す圧が強い
- 「アンコール」の掛け声は無理をしない:会場によっては合唱スタイル、静かな拍手のみのアーティストも。周りに合わせる
- アンコール無しのライブでも失礼ではない:本編でしっかり拍手を送れば、演者への感謝は伝わっている
- W-ENの催促は程々に:会場の音止め時間がある。10分以上呼び続けても状況は変わらない
演者側の実務:香盤表・セットリスト・機材
演者側から見ると、アンコールは「事前に段取りを詰めておく1コーナー」です。当日の運用は次のようになります。
- 香盤表に「EN」欄を作る:EN曲名・尺・MCの有無を明記。PA・照明とも共有
- セットリストにもEN曲を追記:本編の後に「-EN-」の区切りを入れて、EN曲を書く。ステージ上の譜面にも同じ形で
- EN曲で編成が変わるならセット図を分ける:スペシャルゲストの機材・追加マイクなどはステージプロットに反映
- 本編ラストの捌け方を決める:袖まで走らず、拍手を受けながらお辞儀 → 全員で袖へ、の順が定番
- トリのアンコールは特に「終演時間」を意識:延びると次のスケジュール・撤収・打ち上げが総崩れになる