客電とは?意味と読み方・落ちる/入るの合図・演者が知っておく実務まで解説
ライブや舞台で使われる「客電(きゃくでん)」という言葉。結論から言うと、客電とは客席側の照明のことです。「客電が落ちる」と言えば開演の合図、「客電が入る」と言えば終演やアンコールの合図。演者にとってはステージに出るタイミングそのものを意味する重要なキーワードです。この記事では、意味と読み方に加えて、開演前後の流れ・照明さんへの伝え方・演者から見た景色の変化まで解説します。
結論:客電=客席の照明。関連する照明用語の早見表
客電とは「客席照明」を縮めた言葉で、観客が座る(立つ)側を照らす照明のことです。読み方は「きゃくでん」。ステージ側の照明とは系統が分かれており、多くの場合、開演とともに落とされます。
| 用語 | 意味 | 照らす場所 |
|---|---|---|
| 客電(きゃくでん) | 本記事のテーマ。客席の照明。落とす=開演、入れる=終演の合図 | 客席 |
| 暗転(あんてん) | ステージの照明を落として暗くすること。客電とは別系統。曲間や場面転換で使う | ステージ |
| 地明かり(じあかり) | ステージ全体をまんべんなく照らすベースの照明 | ステージ |
| サス(サスペンションライト) | 真上から特定の位置を照らす照明。ソロの見せ場などで使う | ステージ |
| ピンスポ(ピンスポット) | 人物を追いかけて照らす照明。ホール・大箱で使われる | ステージ |
| ホリゾント | ステージ奥の壁・幕を照らす照明。色で世界観を作る | ステージ奥 |
| フットライト | ステージ前端の床から演者を照らす照明 | ステージ |
読み方と語源——もとは劇場の言葉
「客電」は「きゃくでん」と読みます。もともとは劇場・演劇の現場で使われてきた言葉で、客席(きゃくせき)+電気(でんき)=客電という成り立ちです。同じ系統の略語に「舞台電気(舞電)」「作業灯(ワークライト)」などがあります。
ライブハウスの現場には、上手・下手、板付き、バミリ、影アナなど、演劇・興行由来の用語が数多く残っています。客電もそのひとつで、音楽の現場でもそのまま通じる言葉です。
「客電が落ちる」=開演の合図。開演前後のタイムライン
客電がいちばん強く意識されるのは、開演の瞬間です。ライブハウスの一般的な進行では、次のように進みます。
| タイミング | 客電の状態 | 起きていること |
|---|---|---|
| 開場中 | 点灯(明るい) | お客さんが入場・移動する時間。安全のため明るく保つ。BGMが流れている |
| 開演5分前 | やや落とす | 影アナ(注意事項のアナウンス)が入ることが多い。「まもなく開演です」 |
| 開演直前 | 落ちる(暗くなる) | 客電が落ちた瞬間に歓声が上がる。ここからがライブの時間 |
| 開演 | 落ちたまま | 登場SEが流れ、演者がステージへ。板付きなら既に立っている |
| 本編中 | 落ちたまま | ステージ側の照明だけが動く。演出によっては一瞬入れることも |
| 転換中(対バン) | 入れる(明るい) | 機材の入れ替え作業のため点灯。お客さんはドリンクや移動の時間に使う |
| アンコール | 入れる/落とすは演出次第 | 入れて客席を見渡す演出もあれば、落としたまま続ける場合もある |
| 終演 | 入る(明るい) | 客電が入る=「今日は終わりです」の合図。BGMが流れ、退場が始まる |
客電を「入れる」4つの場面
本編中は落としたままが基本ですが、意図的に客電を入れる場面もあります。いずれも事前に照明担当と打ち合わせが必要な演出です。
| 場面 | ねらい | 注意点 |
|---|---|---|
| ①アンコール・ラスト | 客席とステージを同じ明るさにして一体感を出す。演者からもお客さんの顔が見える | 集中していた空気が緩むので、使うのは終盤に限るのが定石 |
| ②客席降り・フロアに降りる演出 | 安全確保。暗いまま客席に降りるのは事故のもと | 必ず会場の許可を取る。導線もスタッフと共有する |
| ③撮影タイム・記念撮影 | 客席を含めた写真を撮るため。SNS用の集合写真など | 撮影可否は会場ルール次第。事前告知とセットで |
| ④合唱・全員参加のパート | 「みんなで歌う」場面で客席を見せる。参加している実感が生まれる | 曲の途中で明るくなるので、演出として意図が伝わる形にする |
いずれもステージングの一部として設計するもの。「なんとなく明るくする」と、ただ緊張感が切れるだけになってしまいます。
客電が落ちると、演者からはどう見えるのか
初めてステージに立つと驚くのが、客電が落ちるとお客さんの顔がほとんど見えないという点です。ステージ側から見た景色は、客席から想像するものとかなり違います。
- 客席は真っ暗に近い——自分に当たっている照明が明るいほど、対比で客席は暗く見える。最前列がかろうじて見える程度のことも多い
- だからこそ緊張しにくい——「顔が見えないなら大丈夫」と感じる人は多い。初ライブで固まりやすい人にとっては、むしろ味方
- 反応は「音」で判断する——歓声・手拍子・足音。視覚より聴覚で客席の温度を測ることになる
- 客電が入ると景色が変わる——アンコールで客電が入ると、突然お客さんの顔が見えて動揺することがある。入れる演出をする日は、リハや心づもりで想定しておく
- 目線は「見えなくても」届く——客席から演者はよく見えています。見えないからと下を向くと、その姿だけが伝わってしまう
会場による客電の違い——ライブハウス・ホール・フロアライブ
客電の扱いは、会場の形態によって大きく変わります。
| 会場 | 客電の扱い | 特徴 |
|---|---|---|
| ライブハウス | 開演で落とし、転換で入れる | 照明卓のオペレーターが操作。対バンでは転換ごとに明暗が切り替わる |
| ホール・劇場 | ベル(開演合図)と連動 | 開演5分前の1ベルで少し落とし、2ベルで完全に落とすなど段階的。演劇由来の作法が残る |
| フロアライブ | そもそも分かれていないことが多い | ステージがなく演者と客が同じ床にいるため、客席照明とステージ照明の境界が曖昧 |
| カフェ・バー | 落とさない/落とせない | 飲食営業のため明るさを保つ。アコースティックライブでは明るいまま演奏することも多い |
| 野外・フェス | 日中は概念として存在しない | 自然光のため照明演出そのものが効かない。夜のステージでのみ機能する |
| 学園祭・体育館 | 会場の設備次第 | 体育館の照明は段階的な調光ができないことも。事前確認が必須(軽音・文化祭のセット図) |
つまり「客電が落ちてから始まる」という前提が通用しない会場もあるということです。明るいままステージが始まる会場では、SEや影アナなど音で開演を知らせる工夫が重要になります。
照明担当への伝え方——客電に関する要望
ライブハウスでは、PAとは別に照明担当がついていることがほとんどです(小箱では兼任のことも)。要望は遠慮せず伝えて構いませんが、タイミングが決まっている演出は事前にが鉄則です。
| 伝えたいこと | 伝え方の例 |
|---|---|
| 登場のタイミング | 「SEの30秒あたりで出ますので、そこでステージだけ薄く点けてください」 |
| 客電を入れてほしい | 「ラスト前の〇曲目のサビで客電を入れてほしいです。合唱パートがあります」 |
| 客席に降りる | 「4曲目で客席に降ります。安全のため客電を入れていただけますか」 |
| 暗転してほしい | 「3曲目の終わりで一度暗転、SEが終わったら全開でお願いします」 |
| 色・雰囲気 | 「1曲目は赤系で激しく、5曲目は青系で静かに」程度でも十分伝わる |
| 特に希望がない | 「おまかせします」で問題なし。曲を聴いて合わせてくれる |
要望が複数ある場合は、曲順に並べたメモ(きっかけシート)を渡すのが確実です。当日のリハーサルは1組20〜30分しかなく(逆リハ・順リハとは)、口頭で伝えた内容は流れてしまいがち。セットリストの余白やセット図の備考欄に書いて渡しましょう。
「客電」を使う会話例と、間違えやすい使い方
現場で実際に飛び交う言い回しを覚えておくと、スタッフとのやり取りがスムーズになります。
- 「客電落ちたら出てください」——客席が暗くなったらステージへ、の意味
- 「客電まだ入れないで」——終演後、アンコールの可能性があるので明るくしないでほしい
- 「客電半分で」——完全に消さず、薄く残す。転換中やトークイベントで使う
- 「客電カット」——一瞬で落とす。じわっと落とす場合は「フェードで」
まとめ:客電は、ライブの始まりと終わりを告げるスイッチ
- 客電(きゃくでん)=客席側の照明。ステージ側の照明とは別系統
- 客電が落ちる=開演、客電が入る=終演の合図。転換中も点灯する
- ステージ側を暗くするのは「暗転」。客電とは別の言葉なので使い分ける
- 客電が落ちると演者からお客さんの顔はほぼ見えない。反応は音で判断することになる
- アンコール・客席降り・撮影・合唱では意図的に客電を入れる。必ず事前に照明担当へ
- カフェ・野外・フロアライブでは客電の概念が通用しないことがある。開演の合図は音で作る
開演前後の流れをもっと詳しく知りたい方は影アナとは、SE(入場SE)とは、板付きとはもあわせてどうぞ。ライブ当日の全体像はライブハウス初出演の完全ガイドにまとめています。