アコースティックライブとは?意味・アンプラグドとの違い・編成と機材・セット図の書き方まで解説
「今回はアコースティックライブでやります」——告知でよく見るこの言葉。結論から言うと、アコースティックライブ=アコースティックギターやピアノ、カホンなどの生楽器を主体に演奏するライブのことです。音量が小さいぶん歌詞と声の表情が届きやすく、お客さんとの距離も近いのが魅力。この記事では、アンプラグドや弾き語りとの違い・編成と機材・会場選び・返しとハウリング対策・セット図の書き方まで、これから出る人の目線で解説します。
結論:アコースティックライブ=生楽器を主体に演奏するライブ。関連語の早見表
アコースティックライブとは、アコースティックギター・ピアノ・カホン・ウッドベースなど、電気的な増幅を前提としない生楽器を主体に演奏するライブのことです。「アコースティック」は英語の acoustic(音響の・生音の)から。まずは近い言葉との関係を整理しましょう。
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| アコースティックライブ | 本記事のテーマ。生楽器主体で行うライブの総称。ソロでもバンドでも使う |
| アンプラグド(Unplugged) | 「プラグを差さない=電気を使わない」の意。MTVの番組「MTV Unplugged」で広まった呼び方で、ほぼ同義に使われる |
| 弾き語り | 1人で歌と伴奏を同時に行う演奏形態。アコースティックライブの中でも最小の形 |
| アコースティックセット(アコセット) | 普段はバンド編成のアーティストが、その日だけアコースティック編成で演奏すること |
| アコバン | アコースティックバンドの略。アコギ+カホン+ベースなどの常設編成を指す |
| フロアライブ | ステージを使わず客席と同じ高さで演奏する形式。アコースティックと相性が良く、併用されることが多い |
厳密な線引きがあるわけではなく、「エレキギターとドラムセットで大音量を出すバンドライブ」と対比した呼び方と理解しておけば実務では十分です。
通常のバンドライブとの違い
同じライブハウスでも、アコースティックだと当日の景色はかなり変わります。
| 視点 | アコースティックライブ | 通常のバンドライブ |
|---|---|---|
| 主な楽器 | アコギ・ピアノ/キーボード・カホン・ウッドベース・ヴァイオリンなど | エレキギター・エレキベース・ドラムセット |
| 音量 | 小さい。MCの声量や客席のざわつきが目立つ | 大きい。多少の物音は演奏に埋もれる |
| ステージの機材 | 少ない。椅子・譜面台・マイク数本で完結することも | アンプ・ドラム・多数のマイクとケーブル |
| セッティング時間 | 短い(5分程度で終わることも) | 長い(転換10〜15分) |
| 伝わるもの | 歌詞・声の表情・アレンジの細部 | グルーヴ・音圧・バンドの一体感 |
| 会場 | ライブハウスのほかカフェ・バー・ギャラリー・野外まで幅広い | PA設備のあるライブハウス・ホールが基本 |
| ミスの見え方 | 隠れない。音数が少ないぶん粗がそのまま出る | 他の楽器に紛れやすい |
「電気を一切使わない」わけではない——PA・DI・ピックアップの話
アコースティック=完全な生音、と思われがちですが、ライブハウスやカフェで行うアコースティックライブでも、ほとんどの場合PA(音響)を通します。数十人規模の会場でも、歌の生声だけでは客席の後方まで届かないからです。
アコースティック楽器の音をPAに送る方法は、大きく2つあります。
| 方法 | 仕組み | 特徴 |
|---|---|---|
| ライン(DI経由) | エレアコやピックアップを付けたアコギからシールドでDIへ→PA卓へ | ハウリングに強く、音量を上げやすい。動き回れる。バンド編成や広い会場の定番 |
| マイク録り | ギターのサウンドホール付近にマイクを立てて集音 | 木の鳴りがそのまま出て音が自然。ただしハウリングに弱く、動くと音量が変わる |
ピックアップの付いていないアコギ(生アコギ)は必然的にマイク録りになります。どちらで出すかはセット図・回線表に必ず書いておきましょう。当日「あれ、ピックアップ付いてない?」と発覚すると、リハの段取りが一気に崩れます。
編成パターン5つ
アコースティックライブと一口に言っても、編成の幅は広めです。代表的な5パターンを紹介します。
| 編成 | 構成 | ポイント |
|---|---|---|
| ①弾き語り(1人) | Vo+アコギ(またはピアノ) | 最小構成。マイク1本+DI1つで済むことも。MCと曲間の設計が生命線 |
| ②デュオ(2人) | Vo+アコギ/アコギ×2/Vo+ピアノ | コーラスとハモリが武器。マイクは2本必要になる |
| ③カホン入りトリオ | Vo+アコギ+カホン(+ベース) | リズムが入りぐっとライブらしく。カホンにはマイクが1〜2本必要 |
| ④アコースティックバンド | Vo・アコギ・ベース(ウッド/エレキ)・カホンやドラム・Key | ほぼバンドと同じ回線数。回線表がそのまま必要になる規模 |
| ⑤アコースティックセット | 普段のバンドがその日だけアコースティック編成に | 普段の曲をアレンジし直す。編成が変わるのでセット図も別途用意 |
編成が2人以上になった時点で、誰がどこに立つか・マイクは何本かを事前に共有する必要が出てきます。弾き語りだから不要、という思い込みが当日のバタつきを生みます。
楽器別・音の出し方の早見表
| 楽器 | 出し方 | 伝えておくこと |
|---|---|---|
| アコギ(エレアコ) | DI経由のライン | DIは会場のものを借りるか持ち込むか。プリアンプ・エフェクターを通す場合はその旨も |
| アコギ(生) | マイク録り | マイクスタンドが1本増える。座って弾くか立って弾くかでスタンドの高さが変わる |
| カホン | マイク1〜2本 | 打面用と低音用で2本立てることも。椅子ではなく楽器の上に座るので置き場所の確保を |
| ウッドベース | ピックアップ(DI)+マイク | サイズが大きく場所を取る。ステージ後方・下手寄りが定番 |
| キーボード/電子ピアノ | DI×2(ステレオ) | スタンドと電源の位置。詳しくはキーボード・同期のセット図 |
| グランドピアノ | 会場備え付け+マイク | ある会場は限られる。事前に必ず確認・調律の有無も |
| ヴァイオリン等 | マイク or ピックアップ | 動きながら弾くならピックアップが安全 |
| コーラス | マイク | 本数と立ち位置。1本を2人でシェアするかどうかも明記 |
アコースティックライブのセット図の書き方
「機材が少ないからセット図はいらない」と思われがちですが、アコースティックだからこそ書くべきことがあります。
- 椅子の有無と数——座って演奏するのか立つのか。カホンがある場合は「カホン用のスペース」も
- アコギはDIかマイクか——ここが最大の分岐点。エレアコなら「DI(会場のものをお借りします)」まで書く
- マイクの本数と用途——Vo用・コーラス用・楽器用を分けて記載。スタンドの種類(ストレート/ブーム)も分かると親切
- 譜面台の有無——意外と忘れられがち。数を書いておくと当日そのぶん用意してもらえる
- 電源の要否——キーボード・プリアンプ・ルーパーを使うなら位置を明記
- 返しの希望——「自分の声を多め、ギターは少なめ」など、一言添えるだけでリハが速くなる
書き方の基本はセット図の作り方、弾き語り特有のポイントは弾き語りのセット図の書き方で詳しく解説しています。
アコースティック特有の「返し」とハウリング対策
アコースティックライブで最も多いトラブルがハウリングです。理由は単純で、ギターの箱(ボディ)とマイクが、モニターの音を拾って共振しやすいから。バンドと同じ感覚で返しを上げると、あっという間に「ボワーン」と鳴ります。
| 対策 | 内容 |
|---|---|
| 返しは引き算で作る | 「全部聞こえるように上げる」ではなく、必要なものだけ入れて他は下げる。アコースティックは元の音量が小さいので、少し入れるだけで十分聞こえる |
| モニターの正面に立たない | マイクがモニターの真正面を向くとハウりやすい。立ち位置を少しずらすだけで改善することが多い |
| サウンドホールカバー | エレアコのハウリング対策の定番アイテム。ボディの共振を抑える。1つ持っておくと安心 |
| 弾かないときはボリュームを絞る | MC中にギターのボリュームを下げるだけでハウリングの芽を摘める |
| PAに早めに相談 | リハの時点で「ハウリやすいので少し低めでお願いします」と伝えておく。当日いきなり本番で起きるより何倍もよい |
返しの基本的な考え方と頼み方のフレーズは返し(モニター)とはにまとめています。
会場の選び方——ライブハウス以外も選択肢に
| 会場 | 特徴 | 注意点 |
|---|---|---|
| ライブハウス | PA・照明・モニターが揃っている。ブッキングで対バンに混ざることも | バンドと同じ日に出ると音量差で埋もれやすい。アコースティック中心の日を選ぶと相性がよい |
| カフェ・バー | 距離が近く、生音に近い響き。飲食のついでに聴いてもらえる | PAが簡易(またはなし)。電源・スペース・音量の許容を事前確認 |
| ギャラリー・寺社・公民館 | 残響が豊かで歌が映える会場も多い | 音響設備なしが基本。持ち込みPAの手配が必要になることも |
| 野外・路上 | 通行人に届く。開放感がある | 許可の確認が必須。電源とバッテリーアンプ、風によるノイズ対策も |
| 配信・無観客 | アコースティックは配信と相性が良い(音数が少なく音が濁りにくい) | マイクの本数と配線がそのまま音質に直結する |
選曲・アレンジ・MCのコツ
- 原曲をそのまま薄くしない——バンドアレンジから楽器を抜くだけだと物足りなくなる。テンポを落とす・キーを変える・イントロを作り直すなど、アコースティック用に組み直す
- 強弱で聴かせる——音量では勝負できないぶん、ダイナミクス(弱→強)が最大の武器。1曲の中に静かな場所を作る
- MCの比重が上がる——距離が近いぶん、言葉が届きます。曲の背景を一言添えるだけで刺さり方が変わる(ライブMCの話し方・作り方)
- カバーを1曲入れる——初見のお客さんが多い場では、知っている曲が入り口になる。アコースティックはカバーが映える編成
- 曲間を設計する——チューニング・カポの付け替えで生まれる無音を、MCや次曲の導入で埋める。セットリストにカポ位置とキーを書いておくと迷わない
まとめ:アコースティックライブとは、音を削って言葉を届ける形式
- アコースティックライブ=生楽器を主体に演奏するライブ。アンプラグドはほぼ同義、弾き語りはその最小形
- 通常のバンドライブとの違いは音量・機材の少なさ・距離の近さ。そのぶん粗も隠れない
- 電気を一切使わないわけではない。ほとんどの会場でPAを通し、アコギはDI(ライン)かマイク録りで出す
- 編成は弾き語り→デュオ→カホン入り→アコバン→アコースティックセットまで幅広い
- セット図には椅子・DIかマイクか・マイク本数・譜面台・電源・返し希望を書く
- 最大の敵はハウリング。返しは引き算で作り、モニターの正面を避ける
編成別の書き方は弾き語りのセット図・バンド編成別セット図、当日の流れはサウンドチェック・リハの流れもあわせてどうぞ。