管楽器のマイク本数と立ち位置|ホーン隊(サックス・トランペット)のライブ申告【シート無料】
ロックやスカ、ファンク、ポップスのバンドにサックス・トランペット・トロンボーンが1〜4本入ると、セット図に書くことが急に増えます。マイクを何本頼むのか、会場のスタンドマイクか自分のクリップマイクか、どこに立つのか、返しは何台いるのか。ギターやベースと違ってアンプがないので、客席に届く管の音はすべてマイクから出ます。結論から言うと、マイクは1人1本、減らすなら金管同士で1本、立ち位置はギターアンプと反対側に横一列。この記事では、管1〜4本の本数早見表、クリップマイクを持ち込むときの電源(48V)とワイヤレスの申告、ドラムやアンプとの距離、返しの台数、セット図と回線表への書き方、リハで確かめることまでを、そのまま印刷して埋められるA4シート(無料・PDF4ページ)つきで解説します。
結論:管楽器が会場に伝えるのは「本数・マイクの種類・立ち位置」の3つ
ホーン隊がライブハウスに伝えることは、突き詰めると3つです。管楽器はアンプを持たないので、この3つが決まれば PA は当日の段取りを組めますし、決まっていないと転換で止まります。
- 本数——1人1本。会場のマイクが足りないときに減らすのは金管(トランペット・トロンボーン)同士で1本まで
- マイクの種類——会場のスタンドマイク(SM57 系)か、自分のクリップマイク(持込)か。持込なら48V(ファンタム電源)とワイヤレスの帯域を申告する
- 立ち位置——ギターアンプと反対側に横一列、ドラムから離す。マイク番号は下手から①②③…
この記事は、ロックバンドやスカ・ファンクのバンドに管が1〜4本入る場合に絞っています。17人のジャズオーケストラの並びとひな壇はビッグバンドの配置図・並び方に、コンクールの様式は吹奏楽のステージ配置図に分けました。セット図そのものの描き方はセット図の作り方・書き方のとおりで、ここでは管の欄に何を書くかだけを扱います。
本数の早見表——管1〜4本×「1本ずつ/2人で1本/クリップ持込」
まず本数です。原則は1人1本で、会場のマイクやチャンネルが足りないときにだけ減らします。減らしてよい組み合わせには理由があるので、表の右の列を見てください。
| 編成 | 標準(1人1本) | 足りないとき(最小) |
|---|---|---|
| 管1本 | 1本。スタンドでベルの前へ | 減らせない。ボーカルマイクの兼用はしない(歌の音作りになっている) |
| 管2本 | 2本(1人1本) | 2本のまま。Tp と Sax は音量差が大きく共有に向かない |
| 管3本 | 3本(Tp・Sax・Tb に各1) | Tp と Tb で1本(金管同士・スタンド)+Sax 1本=計2本 |
| 管4本以上 | 人数分。ソロマイクを別に1本 | 金管は2人で1本まで(野外ビッグバンドの例=Tb 4人に2本)。Sax は1人1本 |
野外のジャズフェスでビッグバンドを担当した音響家の例では、サックス5本はベルの至近で1人1本、トロンボーンは4人に2本と、減らす側はいつも金管です。米国のジャズフェスティバルの PA も、トランペットとトロンボーンには SM57、サックスには別の大口径ダイナミックを使い、人数が多いセクションだけ「5人で3本」のように分け合っていると書いています。ロックバンドに入る管3本なら、SM57 を3本がいちばん普通の形です。
ソロマイクを足すか
本数の表にソロマイクを足すかどうかは、ソロのときに前に出るか、その場で吹くかで決まります。
| ソロの形 | 足すマイク | 書き方の例 |
|---|---|---|
| 前に出て吹く | センター寄りにソロマイク1本 | 「Solo:SM58 スタンド(会場)」。Vo マイクとは別に頼む |
| その場で吹く | 足さない。PA がその人の ch を上げる | 回線表の備考に「3曲目間奏 ②Ts ソロ」 |
| クリップマイク | 足さない。常に同じ距離で拾える | どこへ動いても音が変わらない。PA はフェーダーだけ |
前に出るならソロマイクはボーカルマイクとは別に頼みます。ボーカルのマイクは歌の音作り(EQ)になっていて、管を入れると歌も管も中途半端になるからです。ソロの位置と導線は立ち位置の節で図にしています。
スタンドマイクとクリップマイク——持ち込むなら電源とワイヤレスを申告する
本数が決まったら、会場のマイクを借りるか、自分のクリップマイクを持ち込むかです。ライブハウスの管楽器用はほぼSM57 系のダイナミックマイクをブームスタンドでベルの前に立てる形で、Shure の解説でも「SM57 をストレートスタンドでベルに向けて下向きに」が定番として挙がっています。動きが多い、ベルの向きが変わる、ソロで前に出る——そういうパートが楽器に付けるクリップマイクを持ち込みます。
| 種類 | 向いている場面 | 会場に伝えること |
|---|---|---|
| スタンド型(会場のSM57など) | 立ち位置が決まっている。持込なし。いちばん多い形 | 「ブームスタンド◯本」。ベルの高さに合わせるのでストレートより扱いやすい |
| クリップ型・有線(持込) | 動く・踊る・ベルの向きが変わる。ソロで前に出る | 機種名+「48V(ファンタム)必要」。ケーブルは XLR–XLR |
| クリップ型・ワイヤレス(持込) | ステージを歩く・客席に降りる | 機種名+周波数帯(B帯/2.4GHz)+受信機の置き場所と電源 |
サックスは音がキーとベルの両方から出る楽器で、Shure の解説では、ベルだけを狙うと明るく前に出る音、キー側を狙うと太い音と、向きで音色が変わると説明されています。スタンドマイクならベルから7〜10cm、やや上からキー側に向けるのが「ナチュラル」とされる基本の位置です。トランペット・トロンボーンは音がベルから一直線に出るので、ベルの軸から少し外して置くと、PA が歪まずに拾えます。
クリップマイクで実際によく挙がる機種を、例として並べます。
| 機種(例) | 方式・電源 | 特徴 |
|---|---|---|
| SHURE BETA 98H/C | コンデンサー・ファンタム | グースネックでベルに付け、カプセルを管の中へ。ワイヤレス送信機にも付く |
| audio-technica ATM350U | コンデンサー・ファンタム | クリップ式グースネック。最大入力音圧159dB。税込36,080円(楽器店の記事) |
| audio-technica PRO35 | コンデンサー・ファンタム | 軽量・ローカットスイッチ付き。税込16,610円 |
| AKG C519M | コンデンサー・ファンタム | 管楽器用クリップ。奏者のブログで愛用例が多い |
| DPA 4099(Extreme SPL) | コンデンサー・ファンタム/送信機 | 154dBまで歪まない金管向け。サックス用・金管用クリップ |
| CLOUDVOCAL iSOLO CHOICE | ワイヤレス一体(2.4GHz) | 見通し30m。ロング/クリップの2種アタッチメント。税込59,400円 |
持ち込むときに伝える3点——48V・ケーブル・抜き差し
クリップマイクを持ち込むとき、機種名のほかに伝えることは3つです。サックス奏者のブログでも「現在のクリップ式はほとんどがコンデンサーで、ファンタム電源が必要」「ダイナミックと併用するときは注意」と繰り返し書かれていて、ここが申告の中心になります。
| 伝えること | なぜ | 書き方の例 |
|---|---|---|
| 48V が要る | クリップ型はコンデンサー。卓のその ch で PA が ON にする | 「②Ts:ATM350U 持込・48V 必要」 |
| ケーブル | ファンタムは XLR–XLR でしか送れない。片側フォンだと動かない | 「XLR ケーブル持参」か「会場のをお借りします」 |
| 抜き差し | 48V が ON のまま抜くと大きなポップ音。機器を傷めることも | 「転換で外します。フェーダーを下げてから抜きます」 |
ワイヤレスのクリップマイクは、これに周波数帯(B帯か 2.4GHz 帯か)と受信機の置き場所・電源が加わります。会場のワイヤレスや IEM と帯域が重なると使えないので、持ち込む電波機器はバンドでまとめて申告します。詳しくはワイヤレスマイクをライブで使う注意点に、イヤモニと一緒に持ち込む場合はIEM(イヤモニ)とはにまとめています。スタンドの種類(ブーム/ストレート)の違いはマイクスタンドの種類と立て方を参照してください。
立ち位置——ギターアンプと反対側に横一列、ドラムから離す
立ち位置は、管楽器の申告でいちばん当日の音を左右する項目です。管のマイクは本人の音を拾うために置いてありますが、すぐ横にギターアンプがあれば、マイクにはアンプの音が同じくらい入ります。これをかぶりと言い、PA は管のフェーダーを上げるとアンプも上がるので、管を前に出せなくなります。ドラムのシンバルも同じです。
図のポイントは3つです。
- ギターアンプと反対側に寄せる——ギターアンプが下手なら管は上手。ドラムからも数歩分離すと、シンバルのかぶりが目に見えて減る
- ベルを歌のマイクと返しに向けない——管の音はまっすぐ飛ぶ。ボーカルの後ろに立つなら少し横にずれ、ベルを客席へ向ける。レゲエやスカのフェスの音響手引きも「ホーンはボーカルの真後ろではなく少し後ろの横、ベルは歌い手から外す」と書いている
- マイク番号は下手から①②③…——客席から見て左が下手。上手・下手は客席から見た向きで書く
人数やステージの奥行によって、横一列以外の形も使います。
| 形 | 向いている場面 | 注意 |
|---|---|---|
| 上手か下手に横一列 | 管2〜3本の対バン。いちばん多い形 | ギターアンプと反対側に寄せ、ドラムから離す |
| ボーカルの後ろの列 | 管3〜4本、奥行のあるステージ | 歌のマイクにベルを向けない。箱馬1段あれば頭越しに飛ぶ |
| 前に出てソロ | ソロやキメで一歩前 | センターのソロマイクへ。返しを踏まない導線を空けておく |
箱馬(高さ20〜30cmの台)が1段あるライブハウスなら、管だけ段に上げると、ベルが前の人の頭越しに客席へ飛び、歌のマイクにも入りにくくなります。段の呼び方と寸法は吹奏楽の配置図のひな壇の節にあります。サックスをトランペット・トロンボーンから少し離すと、お互いのマイクへのかぶりも減ります。
返しは何台?——欲しいのは自分の音ではなく、歌とリズム
管楽器の返しの考え方は、ギターやボーカルと逆です。自分の音はベルから出て自分の耳に届くので、返しに自分を入れる必要はほとんどありません。欲しいのは歌(キメの合図)・キック(テンポ)・キメを合わせる相手(ギターか鍵盤)です。
| 管の人数 | 返しの台数 | 欲しい音(書き方の例) |
|---|---|---|
| 管1〜2本 | 1台(2人で共有) | 「Horn:歌とキック多め、自分は少し」 |
| 管3本 | 1〜2台(3人で1台でも成立) | 「Horn:Vo・Key のキメ・キック。管は返さなくてよい」 |
| 管4本以上 | 2台(左右) | ソロマイクの前に1台足す。要望はセクションで1つにまとめる |
ホーン隊の3人がそれぞれ「自分をもう少し」と頼むと、返しの中で管が大きくなり、ベルの近くに置いた返しの音がマイクに回ってハウリングに近づきます。要望はセクションで1つにまとめて伝えます。返しの頼み方のフレーズは返し(モニター)とは、ハウリングの仕組みはハウリングとはにまとめています。
セット図と回線表への書き方——マイク番号は下手から、持込は機種名まで
ここまでの内容を、セット図(ステージを上から見た図)と回線表(マイク1本=1行の表)に落とします。管の欄で PA が見たいのは「どのマイクが誰の、どの楽器か」と「持込か会場か」の2つだけです。
| 書く場所 | 書くこと | 例 |
|---|---|---|
| セット図 | マイク記号+番号+楽器。持込は(持込) | 「③Tb SM57(会場)ブーム」「②Ts クリップ持込 48V」 |
| 回線表 | 管1本=1ch。ソロマイクは別 ch | 「ch9 Tp/ch10 Ts(持込・48V)/ch11 Tb/ch12 Solo」 |
| 備考欄 | 電源・ワイヤレス・持ち替え・ソロ | 「②は4曲目だけフルートに持ち替え(同じマイク)」 |
共有マイクは、必ずスタンドに立てると書き添えます。ハンドで回し合うとノイズが出るうえ、2人のベルからの距離がずれて片方だけ大きくなるからです。回線表の書式そのものは回線表(インプットリスト)の書き方に、記号の描き方はセット図の作り方・書き方の早見表にあります。
備考欄の文例(コピーして使えます)
| こういうとき | 備考欄にこう書く |
|---|---|
| 管3本・全部会場のマイク | 管楽器3本(Tp・Ts・Tb)=SM57 系をブームスタンドで3本お借りします。1人1本、ベルの前です |
| クリップマイクを1本持ち込む | ②Ts はクリップマイク(ATM350U)持込。48V(ファンタム)をお願いします。XLR ケーブル持参 |
| ワイヤレスのクリップ | ①Tp はワイヤレスのクリップマイク持込(B帯・1本)。受信機は下手袖に置き、電源1口お借りします |
| マイクが足りないと言われた | Tp と Tb で1本を共有します(金管2人で1本・スタンド)。Sax は1本のままお願いします |
| ソロで前に出る | 3曲目間奏で②Ts がセンターのソロマイクへ出ます。Vo マイクとは別に1本お願いします |
| 持ち替えがある | ②は4曲目だけフルート。同じマイクで、曲間にスタンドの高さを変えます |
リハーサルで確かめること——ソロの音量差・持ち替え・ミュート
対バンのリハは、セッティング込みで1組20〜30分が目安です。管楽器は本番と同じ距離で吹かないと PA が音を決められないので、この順番で、ベルとマイクの距離を本番どおりに確かめます。
- マイク番号順に1人ずつ8小節——PA がゲインと EQ を決める。ベルとマイクの距離を本番と同じに
- いちばん大きいキメ——音量の上限。ここでドラムのかぶりが目立つなら、1歩ドラムから離れる
- いちばん静かなバッキング——音量の下限。管を返しに入れていないか確かめる
- ソロの曲を頭から——ソロと伴奏の音量差を PA に聴かせる。前に出るならその動きまで
- 持ち替え・ミュートの曲——フルートやミュート付き Tp は1段音が落ちる。距離を詰めるか PA に一言
- 返しの要望をセクションで1回——3人で別々に言わず、まとめて1つ
会場ごとのマイクの上限——ライブハウス・ホール・学祭野外
必要な本数が決まったら、会場に足りるかを確かめます。管に使う SM57 系は、ドラムのスネア・タムやギターアンプにも使うので、本数には上限があります。公開されている機材表から場面ごとに並べるとこうなります。
| 会場 | 上限になるもの | 実例 |
|---|---|---|
| ライブハウス | SM57 系の本数とスタンド | 新宿SAMURAI:SM57×6・SM58×6・Beta58A×4 ほか計30本、DI 10、返し6、ワイヤレス5。京都GROWLY:SM57×7・SM58×10、スタンド22本、返し5台 |
| 公共ホール | ワイヤレスの本数(受信機の ch 数) | 横浜・ミズキーホール:ダイナミック24本に対しワイヤレスは6本まで。はね返り6台 |
| 学祭・野外 | 持込 PA の卓の ch 数とスタンド | 生音が届かないので管は1人1本が原則。野外ビッグバンドの例=金管は57、Tb 4人に2本、各セクションに予備1ch |
申込書や連絡のメールには、「管3本=有線3本・ワイヤレス0本、うちクリップ持込1本(48V)」のように有線とワイヤレス、会場と持込を分けて書きます。「マイク3本」だけだと、会場がボーカル用の SM58 で準備することがあるからです。学園祭の屋外ステージでは、これに加えて電源と雨天の扱いを決めます。屋外なら学園祭の野外ステージ配置図を、ジャムセッションに管で参加するならジャムセッション入門もあわせて読んでください。
管楽器セッティングシート(A4・4ページ)を無料ダウンロード
ここまでの内容を、そのまま印刷して埋めるだけのA4シートにしました。1ページ目が記入用(奏者ごとのマイク・電源・返しの表、立ち位置の図、返し・本数・ソロ・48V の4欄)、2ページ目が管3本の記入例、3ページ目が本数・マイクの種類・立ち位置・返し・リハの早見表、4ページ目が会場の上限・備考欄の文例・提出前チェック12項目です。登録不要・完全無料、印刷も配布も改変も自由です。
使う順番は3ステップです。① 3ページ目の早見表で本数とマイクの種類を決める → ② 1ページ目の表に、下手から①②③…とマイク番号・名前・楽器・会場/持込・48V を書く → ③ 立ち位置の図に番号を書き込み、返しと本数の欄を埋める。この3つが埋まっていれば、当日マイクまわりで止まることはまずありません。ギターとベースの持込アンプはギター・ベースの機材申告、ドラムの持込パーツはドラムの配置図と機材申告で、同じ体裁のシートを配っています。
まとめ
- 管楽器のマイクは1人1本。足りなければ金管(Tp・Tb)同士で1本まで。サックスは減らさない
- 会場のマイクはSM57 系をブームスタンドでベルの前。持ち込むクリップマイクは機種名+48V+XLR ケーブルを申告する
- 立ち位置はギターアンプと反対側に横一列、ドラムから離し、ベルを歌のマイクと返しに向けない
- 返しは管3人で1台でも成立。欲しいのは自分ではなく歌とキック。要望はセクションで1つに
- セット図には番号+楽器+会場/持込、回線表は管1本=1ch、ソロマイクは Vo と別に
- 本数は会場で上限が決まる(ライブハウスの SM57 は6〜7本)。有線とワイヤレス、会場と持込を分けて書く


