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用語集

「押す」「巻き」とは?ライブ・イベント業界の時間用語|意味と使い方・押す原因と対処法

公開:2026年08月14日 ・ 運営:LOCAL POWER株式会社(セット図くん)

ライブ当日、スタッフから「すみません、10分押してます」「次、巻きでお願いします」と言われて戸惑ったことはありませんか。結論から言うと、「押す」=予定より遅れること、「巻く」=予定より早めること。イベント・放送・舞台の現場で日常的に使われる時間の用語です。この記事では意味と使い方に加えて、なぜライブは押すのか・押すと何が起きるのか・演者として何を削るべきかまで、現場の実務として解説します。

押しの原因、いちばん多いのは転換です
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結論:押す=遅れる、巻く=早める。時間用語の早見表

「押す(おす)」とは、進行が予定の時刻より遅れること「巻く(まく)」とは、進行を予定より早めることです。どちらもイベント・舞台・放送の現場で使われる業界用語で、ライブハウスでも毎日のように飛び交います。

用語意味使う場面
押す(おす)予定より遅れる。「10分押してます」=10分遅れている転換が長引いた、リハが延びた、機材トラブルなど
巻く(まく)予定より早める・進行を急ぐ。「巻きでお願いします」=早めに進めてほしい押しを取り戻したいとき、終演時刻が迫っているとき
押し(おし)遅れそのもの。「押しが出る」「押しを取り戻す」遅れの量を話題にするとき
巻き(まき)早めること・短縮の指示。「巻き入れて」スタッフ間の指示
押せ押せ遅れが積み重なって全体が後ろ倒しになっている状態対バンで1組目から遅れが連鎖したとき
定刻(ていこく)予定どおりの時刻。「定刻で行けてます」=遅れていない進行が順調なとき
前倒し(まえだおし)予定より前の時刻に動かすこと。巻きの結果として起きるスケジュール全体を早める判断のとき
💡 語源は「時計の針を押す・巻く」から:予定の時刻より後ろへ押しやるから「押す」、時計のぜんまいを巻いて進めるから「巻く」——と説明されることが多い言葉です。放送・演劇・イベントで共通して使われており、ライブハウスの現場にもそのまま入ってきました。

現場で飛び交う例文集——こう言われたらこう動く

実際の言い回しと、その場で求められている行動をセットで覚えておくと迷いません。

言われること意味と、求められている行動
「10分押してます」全体が10分遅れている。今すぐ何かを削る必要はないが、余計な時間は作らない
「次、巻きでお願いします」あなたの持ち時間を予定より短くしてほしい。MCを削る、曲を1曲削るなどの判断を求められている
「転換巻いてください」セッティングを急いでほしい。会話をやめて手を動かす場面
「押してるので、リハは頭とケツだけで」曲の頭(イントロ)と終わりだけ確認して終える。フルで通さない
「押し戻したいので、転換5分でお願いします」遅れを回復する作戦。転換の短縮で取り戻すのが定石
「巻き、入りました」予定より早く進んでいる。ゆとりができた状態
「押しても大丈夫ですか?」終演時刻に余裕があるかの確認。会場のケツ(退館時刻)次第
「ケツカッチンなので巻きで」終了時刻が絶対に動かせない。何があっても間に合わせる必要がある

「巻き」のハンドサイン——ステージ上で伝わる合図

演奏中は口頭で伝えられないため、ジェスチャーで合図が飛んできます。ライブハウスのPAブースや袖から、次のようなサインが出ることがあります。

💡 合図の意味は事前にすり合わせておくと確実です:「巻きのサインが出たらMCを飛ばして次の曲へ」とバンド内で決めておけば、本番で慌てません。PAや進行スタッフに「巻きのときはどう合図しますか?」とリハの段階で聞いておくのがおすすめです。

なぜライブは押すのか——押しが出る7つの原因

押しは事故ではなく、ほぼ決まった場所から生まれます。原因を知っていれば、自分が発生源にならずに済みます。

原因起きること押す量の目安
転換の遅れ最大の原因。機材の入れ替えに手間取る、セッティングを当日ゼロから相談する1組あたり3〜10分
②リハーサルの延長音作りに時間がかかる、返しの要望が固まっていない、曲を通しすぎる1組あたり5〜15分
③MCが長い持ち時間の感覚がないまま話す。本人は3分のつもりでも実際は7分ということが起きる1組あたり2〜8分
④機材トラブル弦が切れる、シールドの断線、電池切れ、PCの同期が落ちる3〜15分
⑤客入りの遅れ開場が遅れる、入場に時間がかかる。開演そのものが後ろにずれる5〜20分
アンコール・演出の追加予定になかったアンコールに応える。ゲスト参加など5〜15分
⑦仕込みの遅れそもそも仕込みが予定通り終わらず、リハの開始が後ろにずれるその日ずっと引きずる

注目すべきは、①②③④のうち3つが演者側で減らせるということ。特に転換とMCは、準備次第でほぼコントロールできます。

転換が速いバンドは、押しを作らない
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押すと何が起きるのか——遅れの先にある制約

「少しくらい押しても大丈夫では」と思うかもしれませんが、押しの先には動かせない制約が並んでいます。

制約内容
会場の退館時刻ホール・公共施設は契約上の使用時間が厳格。超過すると追加料金、最悪は次回の利用に影響する
近隣への騒音配慮とくに深夜帯。22時以降の音量規制がある会場も多く、押した分だけ制約時間に食い込む
バラシの時間終演が遅れれば撤収も遅れる。スタッフの終業時刻に直結する
お客さんの終電最後まで見てもらえなくなるのが最大の損失。終盤で客席が減るのは押しが原因のことも多い
次の出演者の心理持ち時間を削られるのは、たいてい後ろの出演者。押した分のしわ寄せはトリが背負う
物販・打ち上げ終演後の物販時間が短くなる。お客さんと話す時間そのものが減る
⚠️ 「押し」のしわ寄せは、あなたの後ろにいる人が受けます:自分の持ち時間を5分オーバーしても、その日のうちに自分が損することはあまりありません。損をするのは次の出演者と、最後まで見たかったお客さんです。時間を守ることが現場での信頼になるのは、この非対称があるからです。

押したとき、誰が何を削って調整するのか

押しが出たとき、現場は次のような優先順位で削っていきます。上から順に、影響が小さいものから削るのが基本です。

  1. 転換時間——最初に削られる。10分予定を5分に。お客さんの体験を損なわないので最優先
  2. リハーサル——本番前なら、フル通しをやめて頭とケツだけに。線出し(音が出るかの確認)だけにすることも(逆リハ・順リハとは
  3. MC——各組が自主的に短くする。ここは演者の判断で削れる部分
  4. 曲数——1曲削る。セットリストの「削る候補」を事前に決めておくとスムーズ
  5. アンコール——予定していたアンコールを取りやめる、または短縮する
  6. 開演を遅らせる——押しが開演前に確定している場合、影アナで「開演が10分遅れます」とアナウンスする

判断するのは主催者・進行スタッフ(ステージマネージャー)です。演者が勝手に「巻いておこう」と曲を減らすと、逆に全体が早く終わりすぎて次の準備が間に合わないこともあります。必ず一声かけて合意してから削るのが原則です。

演者としての対処——何から削るのが正解か

「巻きで」と言われたとき、その場で判断できるように優先順位を決めておきましょう。

削るもの判断
MC最初に削るべき場所。曲間の一言をカットし、必要な告知(次のライブ・物販・バンド名)だけ残す。MCの組み立て方を知っていれば、削っても崩れない
SE・イントロ登場SEを短くする、長いイントロを詰める。1〜2分は普通に稼げる
曲間の間(ま)チューニングや持ち替えの時間。曲順を工夫して持ち替えを減らすと根本的に速くなる
曲を削る最後の手段。削るなら中盤の1曲。1曲目と最後の曲は流れを作るので原則触らない
絶対に削らないものバンド名を名乗ること音を止めてからのステージ撤収。ここを省くと本末転倒
💡 「巻きプラン」を先に作っておくセットリストを組むときに「押したらこの曲を抜く」「MCはここを削る」と決めておけば、本番で迷いません。持ち時間の管理はO.A.トッパーなど時間の短い出番ほど重要になります。

そもそも押さないための予防5つ

押しを取り戻すより、押さない方がずっと簡単です。演者にできる対策は次の5つです。

  1. セット図・回線表を事前に送る——転換とリハが速くなる最大の要因。当日その場で説明するのと、図を見て準備してもらうのでは所要時間がまるで違います(インプットリストの書き方
  2. 持ち時間を実測しておく——リハスタでMC込みで通し、ストップウォッチで計る。「たぶん30分」は大抵35分です
  3. ステージに上がる前に完成させておく——チューニング、電池交換、ボードの接続は袖で終える。上がってから始めない
  4. 持ち込み機材を減らす——会場の機材で足りる部分は使う。運ぶ物が少ないほど転換は速い
  5. 撤収の役割を決めておく——演奏後、誰がどの機材を下げるかを事前に決める。全員が同じ物に群がると倍の時間がかかります
▲ 対バンでは機材ごとに持込か会場(レンタル)かを明記。ドラム本体は会場のものを使い、ペダルやスネアだけ持ち込むなら備考へ。

とくに「持込か会場(レンタル)か」が図に書いてあるだけで、転換の段取りは大きく変わります。会場側は「このバンドはアンプを持ち込む=ハウスのアンプを一度どける必要がある」と先に分かるからです。詳しくは対バンのセット図・提出マナーで解説しています。

押さないための準備は、当日より前にできる
配置・機材の持込区分・返しの希望まで1枚に。セット図くんならスマホで数分、URLで共有できます。登録不要・完全無料。
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香盤表・タイムテーブルの読み方——押しを織り込む

進行の基準になるのが香盤表(タイムテーブル)です。押しと巻きを理解して読むと、この表の意味が変わってきます。

⚠️ 「開演が押す」場合はお客さんへの告知が必要です:開演時刻が10分以上遅れるなら、影アナや掲示で伝えるのが基本。黙って遅らせるのは、チケットを買って時間どおりに来た人に対して不誠実です。

一緒に覚えたい、時間の業界用語

押す・巻くの周辺には、進行を語るための言葉がひととおりそろっています。

用語意味
尺(しゃく)時間の長さ。「尺は30分です」=持ち時間30分。「尺が余る」「尺が足りない」
頭(あたま)始まりの時刻・曲の冒頭。「頭から」=最初から
ケツ終わりの時刻・曲の最後。「ケツは21時です」=終演21時
ケツカッチン終了時刻が絶対に動かせない状態。次の予定が詰まっているとき
押せ押せ遅れが連鎖して全体が後ろ倒しになっている状態
巻き巻きかなり急いでほしいという強めの指示
前乗り(まえのり)公演の前日に現地入りすること。遠征で移動の遅れによる押しを防ぐ手段
板付き開演前からステージ上にいる形。板付きにすると登場の時間が省ける
押し出し予定を後ろにずらして調整すること

「押す」の一般的な意味との使い分け

「押す」は日常語では物を力で動かす・ボタンを押すという意味です。業界用語の「押す」はまったく別の意味なので、文脈で判断する必要があります。

使われ方意味
「10分押してます」業界用語。進行が10分遅れている
「そのボタン押して」日常語。物理的に押す
「押しが強い」日常語。積極的・主張が強い(進行の遅れとは無関係)
「推し(おし)」まったくの別語。応援している対象のこと。音が同じなので文字で書くときは注意

同様に「巻く」も、日常語では「ケーブルを巻く」「マフラーを巻く」の意味で使います。現場では時間の話なのか物理的な動作なのか、状況で切り分けてください(バラシ中の「巻いて」はケーブルを巻く意味のこともあります)。

まとめ:押しと巻きを理解すると、現場の時間が読めるようになる

当日の進行をもっと知りたい方は香盤表とは転換とは仕込み・バラシとはもあわせてどうぞ。ライブ当日の全体像はライブハウス初出演の完全ガイドにまとめています。

時間を守るバンドは、また呼ばれる
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よくある質問(FAQ)

ライブやイベントで「押す」とはどういう意味ですか?
進行が予定の時刻より遅れることを意味する業界用語です。「10分押してます」と言えば、全体が10分遅れているという意味になります。舞台・イベント・放送の現場で共通して使われ、ライブハウスでも日常的に飛び交います。日常語の「ボタンを押す」とは別の意味なので、文脈で判断します。
「巻き」「巻く」とはどういう意味ですか?
進行を予定より早めること、急ぐことを意味します。「巻きでお願いします」と言われたら、持ち時間を予定より短くしてほしいという依頼です。押した分を取り戻すときや、終演時刻が迫っているときに使われます。演奏中は口頭で伝えられないため、人差し指をぐるぐる回すハンドサインで合図されることもあります。
「巻きでお願いします」と言われたら何を削ればいいですか?
最初に削るべきはMCです。曲間の一言をカットし、バンド名・次のライブ・物販など必要な告知だけ残します。次に登場SEや長いイントロ、曲間のチューニング時間。最後の手段が曲を削ることで、削るなら中盤の1曲が基本です。1曲目と最後の曲は流れを作るため原則触りません。事前にセットリストで「押したらこの曲を抜く」と決めておくと本番で迷いません。
ライブが押す原因で一番多いのは何ですか?
転換(機材の入れ替え)の遅れです。当日その場でセッティングを相談したり、ステージ上でチューニングを始めたりすると、1組あたり3〜10分の押しが生まれます。次いでリハーサルの延長(5〜15分)、MCの長さ(2〜8分)、機材トラブル、客入りの遅れが続きます。転換とMCは準備次第でほぼコントロールできるため、演者側で減らせる押しは多いと言えます。
押すと具体的に何が問題になりますか?
会場の退館時刻、近隣への騒音配慮(22時以降の規制など)、撤収スタッフの終業時刻、お客さんの終電といった動かせない制約に食い込みます。とくに損をするのは自分ではなく、持ち時間を削られる後ろの出演者と、最後まで見たかったお客さんです。この非対称があるため、現場では時間を守ることが信頼に直結します。
押したときは誰が判断して調整するのですか?
主催者や進行スタッフ(ステージマネージャー)が判断します。削る優先順位は、お客さんの体験を損なわない順に、転換時間→リハーサル→MC→曲数→アンコールです。演者が勝手に曲を減らすと逆に早く終わりすぎて次の準備が間に合わないこともあるため、削る場合は必ず一声かけて合意してから行います。
ケツカッチンとはどういう意味ですか?
終了時刻が絶対に動かせない状態を指す業界用語です。「ケツ」は終わりの時刻を意味し、次の予定が詰まっていて延長できない場合に「今日はケツカッチンなので巻きで」といった使い方をします。会場の退館時刻が厳格なホールや、複数の予定が連続している日によく使われます。
押さないためにバンド側でできることはありますか?
5つあります。①セット図・回線表を事前に送る(転換とリハが最も速くなる)、②リハスタでMC込みの通しを実測しておく、③チューニングや電池交換は袖で終えてからステージに上がる、④持ち込み機材を減らして会場の機材を活用する、⑤演奏後に誰がどの機材を下げるか役割を決めておく。特に事前の図面共有は、当日ゼロから口頭で説明する場合と比べて所要時間がまるで違います。