自主企画ライブのやり方|費用相場と収支シミュレーション・出演者の誘い方テンプレ
ブッキングライブに何度か出たら、次に見えてくるのが「自主企画」です。結論から言うと、自主企画ライブとは、自分が主催者になって会場を借り、出演者を集め、チケットを売り、当日を仕切るライブのこと。組み合わせも順番もチケット代も自分で決められる代わりに、赤字のリスクも自分で背負います。この記事では、費用の相場・動員別の収支シミュレーション・出演者の誘い方テンプレ・当日の主催の動きまで、初めて主催する人がつまずくポイントを順番に解説します。
結論:自主企画ライブとは「自分が主催者になるライブ」。関連語の早見表
自主企画ライブとは、バンドやアーティスト自身が主催者となって会場を押さえ、出演者を集め、チケットを売り、当日の進行までを仕切るライブのことです。「企画ライブ」「主催イベント」「〇〇presents」と呼ばれることもあります。まずは似た言葉との違いを整理しましょう。
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| 自主企画ライブ | 本記事のテーマ。主催=自分。出演者・出演順・チケット代・タイムテーブルを自分で決め、会場費または企画ノルマを負担する |
| ブッキングライブ | 主催=ライブハウス。組み合わせは箱(ブッカー)が決める。出演者はチケットノルマを払って出る |
| ハコ貸し(レンタル) | 会場を時間貸しで借りる契約の形。自主企画のもっとも一般的なやり方 |
| presents(プレゼンツ) | 告知での主催表記。「A presents 〇〇」=Aが主催する〇〇というイベント、の意味 |
| ワンマン | 出演者が自分たちだけの形式。自主企画のうち、対バンを呼ばない形にあたる |
| レコ発 | 音源のリリース記念という企画の目的。自主企画を立てる口実としてもっとも定番 |
3つの形式——ハコ貸し・企画ノルマ・共同企画
「自主企画」とひとくちに言っても、お金の背負い方が違う形式があります。最初の1回でいきなりハコ貸しに行く必要はありません。
| 形式 | お金の仕組み | 向いている段階 |
|---|---|---|
| ①ハコ貸し(レンタル) | 会場費を全額負担し、チケット収入はすべて自分のもの。売れれば利益、売れなければ丸ごと赤字 | 動員が読める段階。ワンマンやレコ発の本番 |
| ②企画ノルマ(主催ノルマ) | ブッキングの延長で「企画枠」をもらう形。負担はノルマ額だけで、出演者集めと告知を自分がやる | 初めての自主企画。損失の上限が読めるので最初はこれが安全 |
| ③共同企画(2バンド主催) | 費用も集客責任も折半。「A × B presents」の形で告知する | 動員が近い相棒がいるとき。ツーマンの発展形 |
| ④箱との共催 | ライブハウス側が企画に乗り、会場費を減額または無料にする代わりにドリンク収入や物販の一部を分ける | 箱と信頼関係ができてから。まず相談してみる価値あり |
初めての自主企画なら、まずは②企画ノルマから始めるのが定石です。よく出ている箱のブッカーに「企画をやりたい」と相談すると、ノルマ額と条件を提示してもらえます。ここで集客と出演者集めの感覚をつかんでからハコ貸しに進むのが、失敗の少ないルートです。
費用の全体像——箱代に何が含まれ、何が別料金か
自主企画で最初に確認すべきは「その金額に何が入っているか」です。同じ10万円でも、含まれる範囲は箱によってまったく違います。
| キャパの目安 | ハコ貸し料金の相場(1日) | 備考 |
|---|---|---|
| 〜50人(超小箱) | 3〜8万円 | 平日昼なら数万円で借りられる箱も。初企画向き |
| 100人前後(小箱) | 8〜20万円 | 土日は平日の1.5〜2倍が一般的。自主企画の主戦場 |
| 200〜300人(中箱) | 15〜30万円 | PA・照明のオペ代が別建てになることが増える |
| 500人以上(大箱) | 30〜60万円以上 | 警備・受付スタッフの手配も必要になる規模 |
そのうえで、見積もりに入っていない項目を必ず洗い出してください。ここを見落とすと、あとから数万円単位で膨らみます。
- PA・照明のオペレーター代——含まれるのか、1人いくらの別料金か
- 時間の区切り——搬入から搬出まで何時間か。延長料金は1時間いくらか
- 機材のレンタル代——ドラムセット・アンプ・追加マイク・プロジェクターは別料金のことがある
- チケット手数料——箱の窓口で預かってもらう場合の手数料や、電子チケットの決済手数料
- ドリンク代の扱い——ドリンク代は原則として会場の収入。主催の売上には入らない
- フライヤーの印刷費——100枚単位で数千円から。デザインを外注するならその費用も
- ゲストの交通費・宿泊費——遠方から呼ぶなら前乗り分の宿代まで含めて考える
収支シミュレーション——何人来れば黒字になるのか
もっとも重要なのがここです。「何人来たら黒字か」を先に出してから、企画のサイズを決めます。キャパ100人・ハコ貸し15万円・チケット2,500円・4組出演のモデルケースで見てみましょう。
| 支出の項目 | 金額 |
|---|---|
| 会場費(ハコ貸し) | 150,000円 |
| フライヤー印刷(500枚) | 8,000円 |
| ゲスト3組へのお車代 | 30,000円 |
| 雑費(釣銭準備・受付備品・当日スタッフのお礼) | 12,000円 |
| 支出の合計 | 200,000円 |
損益分岐点の計算式はシンプルです。
この例なら 200,000円 ÷ 2,500円 = 80人。キャパ100人の箱で80人ですから、8割埋めてようやくトントンということになります。
| 動員 | チケット収入 | 収支 | 状態 |
|---|---|---|---|
| 40人 | 100,000円 | −100,000円 | メンバー4人なら1人あたり2.5万円の持ち出し |
| 60人 | 150,000円 | −50,000円 | 箱は賑わって見えるが、赤字は残る |
| 80人 | 200,000円 | ±0円 | 損益分岐。ここが最低ライン |
| 90人 | 225,000円 | +25,000円 | ほぼ満員でようやく黒字 |
この表が示しているのは、キャパ100の箱を借りるなら、動員80人が読めていないと企画として成立しないということです。よく言われる「キャパの7割は確実に埋められる箱を選ぶ」という目安は、この計算から来ています。
赤字を避ける方法は主に3つあります。①チケット代を上げる(2,500円→3,000円なら分岐は67人)②出演者を増やして各組にノルマを設定する(4組から5組にして1組2万円なら分岐は40人)③もっと小さい箱にする(キャパ50・箱代8万円なら分岐は40人前後)。見栄で大きい箱を借りるのが、自主企画で最も多い失敗です。
逆算タイムライン——4か月前から当日まで
自主企画は「箱を押さえた時点で半分終わり」と言われます。人気の箱の土日は半年前から埋まるので、動き出しは早いほど有利です。
| 時期 | やること |
|---|---|
| 4か月前 | コンセプトと予算を決める/候補の箱に空き日程を問い合わせる/料金体系と含まれるものを確認 |
| 3か月前 | 会場と日程を確定(仮押さえの期限を必ず確認)/出演者に声をかける/条件を文字で共有 |
| 2か月前 | 出演者を確定/イベント名・チケット代・解禁日を決める/フライヤーのデザインに着手 |
| 1.5か月前 | 情報解禁・告知スタート(全出演者で同時刻に投稿)/フライヤー入稿/取り置き受付を開始 |
| 1か月前 | 出演者に素材(アー写・ロゴ)を依頼/SNSで週1〜2回の継続告知/他の対バンで手配り |
| 3週間前 | 出演順を決めて香盤表のたたきを作る/各組の持ち時間と転換時間を配分 |
| 2週間前 | 香盤表・タイムテーブルを確定して全員に配布/箱に人数の見込みを共有 |
| 1週間前 | セット図と回線表を全組から回収してPAへ送る/取り置きリストを締め切る/釣銭を用意 |
| 前日 | SNSで最終告知/出演者に集合時間をリマインド/持ち物と当日の連絡先を再送 |
| 当日 | 誰よりも早く入る(後述) |
出演者の誘い方——そのまま使える文面テンプレ4種
自主企画でいちばん緊張するのが、この最初のDMです。コツは相手が返事をしやすい形にすること。具体的には「日程・場所・条件・返事の期限」を最初のメッセージに入れます。
① オファーのDM(初めて誘う相手)
先日〇〇(箱の名前)でご一緒させていただき、ライブを拝見して以来のファンです。
このたび2026年〇月〇日(土)に〇〇(箱の名前・キャパ100)で自主企画を開催することになり、ぜひ〇〇さんにご出演いただきたくご連絡しました。
・日時:2026年〇月〇日(土)開場18:00/開演18:30
・会場:〇〇(住所・最寄駅)
・出演:当方+3組を予定(現在2組確定)
・条件:ノルマなし/お車代として〇〇円をお渡しします
・持ち時間:30分(転換10分)
ご検討いただけますと嬉しいです。ご不明な点があれば何でもお聞きください。〇月〇日ごろまでにお返事いただけると助かります。よろしくお願いいたします。
② 条件を詰める返信
・出演順:3番目(19:40〜20:10/転換込み)
・条件:ノルマなし・お車代〇〇円(当日終演後に現金でお渡しします)
・チケット:2,500円+1D。取り置きは各組で受け付け、当日18:00までに一覧をいただけると助かります
・提出物:セット図と回線表を〇月〇日までにいただけますか(URLでもPDFでも構いません)
・入り:15:00(逆リハのため、リハは16:20〜16:50を予定)
認識に違いがあればご指摘ください。
③ 断られたときの返信
また別の機会にぜひお声がけさせてください。当日の様子はSNSでお伝えします。今後ともよろしくお願いいたします。
④ 1週間前のリマインド
・入り:15:00(楽屋は2階です)
・リハ:16:20〜16:50
・出演:19:40〜20:10
・当日の連絡先:090-XXXX-XXXX(△△)
・香盤表とタイムテーブル:添付のとおりです
お気をつけてお越しください。当日よろしくお願いします!
出演条件の決め方——ギャラ配分5方式
出演者にどう払う(あるいは払ってもらう)かは、企画の性格によって決まります。5つの方式を整理します。
| 方式 | 内容 | 主催のリスク |
|---|---|---|
| 完全招待(フルインバイト) | 出演者の負担ゼロ。交通費や謝礼も主催が持つ | 最大。動員が読めるときだけ |
| お車代のみ | ノルマなしで、一律で数千〜数万円のお車代を渡す | 大。もっとも「呼びやすい」条件 |
| ノルマ制 | 各組にノルマを設定し、超えた分はバックする | 小。初企画はこれが安全 |
| バック制 | ノルマなしで、売れた枚数×〇〇円を出演者に還元 | 中。フェアだが計算と精算の手間がある |
| 折半(共同企画) | 費用も収益も主催バンド同士で山分け | 中。取り決めを最初に文字にするのが必須 |
相手や関係性によって混在させても構いません。よくあるのは「憧れのバンドはお車代つきで招待、同世代の仲間はノルマなし、自分たちが全部背負う」という組み方です。ただし条件が違うこと自体を隠さないほうが安全で、出演者同士が当日に条件を話して発覚すると気まずくなります。
チケットの管理——取り置きリストの作り方
ライブハウスの自主企画では、チケットは各組が取り置き(リザーブ)で受け付けるのが一般的です。主催は当日それを1本にまとめます。
| 項目 | 運用のポイント |
|---|---|
| 受付の方法 | DM・専用フォーム・リプライのどれかに統一する。複数にすると必ず抜ける |
| 集める情報 | 名前(受付で名乗る名前)・枚数・お目当ての出演者の3つ。カタカナ表記も添えてもらうと当日読める |
| 締め切り | 前日または当日の開場2時間前まで。各組から主催へ提出する期限を別途決める |
| 当日のリスト | 出演者ごとにまとめ、五十音順に並べ替えて印刷。手書きの追記欄も残しておく |
| 重複への対策 | 同じ人が2組に取り置きすることがある。受付で名前を消し込む運用にすれば二重計上を防げる |
| 釣銭 | チケット2,500円+ドリンク600円なら、500円玉と千円札を多めに。最低2万円分は用意する |
告知の設計——解禁日を揃えると伸びる
告知でもっとも効くのは「全出演者が同じ時刻に一斉に投稿する」ことです。バラバラに出すと情報が薄く広がり、一気に出すとタイムライン上で面になります。
- 解禁日時を決めて全員に共有する——「〇月〇日20:00に一斉投稿」と伝え、画像とテキストを事前に配る
- 投稿用の素材をこちらから配る——フライヤー画像(正方形と縦長の2種)・定型文・ハッシュタグ
- イベント名は短く覚えやすく——検索される名前かどうかを基準に。第1回なら「vol.1」を付けると続けやすい
- フライヤーの手配りは今でも強い——他の対バンの物販で配る。フライヤーの作り方も参照
- 週1〜2回の継続投稿——出演者紹介・楽曲リンク・見どころを小出しにする
- 取り置きの導線を毎回書く——「ご予約はこちら」を毎投稿に入れる。予約導線のない告知は機会損失
主催がまとめる書類4点
当日の混乱は、ほぼすべて書類の不足から起きます。この4点を主催が作って全員に配れば、当日の質問はほとんど消えます。
| 書類 | 内容と作り方 |
|---|---|
| 香盤表 | 出演順・持ち時間・転換時間・リハ順・入り時間を1枚に。主催が作って配るのが原則 |
| タイムテーブル | 観客向けの簡易版。開場・開演・各組の開始時刻・終演予定。SNSで前日に公開すると、目当ての組だけ観に来る層も取り込める |
| セット図と回線表 | 全組から回収してPAへまとめて送る。フォーマットを主催が指定すると、PAの負担が激減する |
| 進行台本 | 開場BGM・影アナの文面・転換の段取り・終演後のアナウンス。主催のMCが読む原稿まで書いておく |
対バン形式の自主企画では、どの機材が会場のもので、どれが持ち込みかを全組ぶんはっきりさせておくのが最大のポイントです。ここが曖昧だと、当日の転換は必ず押します。詳しくは対バンのセット図・提出マナーも参照してください。
当日の主催の動き——入りから精算まで
当日、主催は「演者」ではなく「主催」として動く時間のほうが長いと考えてください。演奏の準備だけしていると、確実に回らなくなります。
| 時刻の例 | 主催の動き |
|---|---|
| 14:30 | 誰よりも早く入る。店長・PA・照明に挨拶し、香盤表と全組のセット図を渡す。当日の連絡系統を確認 |
| 15:00 | 出演者の入りを迎える。楽屋の使い方・喫煙・搬入導線を説明。貴重品は各自管理を必ず伝える |
| 15:30〜17:30 | 逆リハを回す。時間を見るのは主催の仕事。押しそうなら削る判断を早めに出す |
| 17:45 | 受付の準備。取り置きリストを統合して五十音順に並べ替え、釣銭とチケットを揃える。受付担当に説明 |
| 18:00 | 開場(客入れ)。受付に立つか、信頼できる人に任せる。物販の設置も同時進行 |
| 18:30 | 影アナ→1組目スタート。以降は押し・巻きの管理。転換ごとに時計を見る |
| 各転換 | 次の組に声をかける。押していればMCで巻いてもらうよう先に伝える。自分の出番前も同じ |
| 終演直後 | 終演アナウンス→物販でお見送り。ここが売上のピークなので、演奏後すぐ出られる準備をしておく |
| 客出し後 | 箱と精算(動員数・ドリンク・チケット売上の確認)。出演者への支払いはこの後 |
| バラシ | バラシと搬出。主催は最後まで残る。忘れ物と原状復帰を確認して終了 |
終演後——精算・お礼・次につなげる
ライブが終わってからが、次の企画の準備の始まりです。
- 精算の内訳を必ず紙でもらう——動員数・チケット売上・ドリンク・レンタル・延長料金の内訳を確認する
- 出演者への支払いはその日のうちに——お車代は封筒に入れて手渡し。金額と内訳をメモで添えると丁寧
- 当日中にお礼のDM——遅くとも翌日の午前まで。打ち上げで話した内容にも触れると印象が残る
- 写真と動画を共有する——撮影データをまとめてリンクで渡す。SNSでの二次拡散が起きる
- 収支を必ず記録する——動員・売上・支出・出演者ごとの集客を残す。次のキャパ選びの唯一の根拠になる
- 次回の日程を打診する——手応えがあったうちに、箱に次の空きを聞いておく
よくある失敗10と対策
| 失敗 | 対策 |
|---|---|
| ①見栄で大きい箱を借りた | 動員はキャパの7割で計算。迷ったらワンサイズ下げる |
| ②ドリンク代を売上に数えた | ドリンクは会場の収入。収支計算から外す |
| ③条件を口約束で済ませた | お金・持ち時間・入り時間はテキストで残す |
| ④告知の解禁がバラバラ | 解禁日時を決め、素材と定型文を主催が配る |
| ⑤取り置きの窓口が複数 | 受付方法を1つに統一し、締め切りを決める |
| ⑥香盤表を作らなかった | 入り・リハ・転換・出番を1枚に。前日までに配布 |
| ⑦セット図を集めなかった | 1週間前までに回収してPAへ。転換の速さが変わる |
| ⑧受付を自分でやった | 受付・物販・撮影は人に任せ、事前にお礼を決める |
| ⑨釣銭が足りなくなった | 500円玉と千円札で最低2万円分。開場前に確認 |
| ⑩時間管理を箱任せにした | 押し・巻きの判断は主催の仕事。転換ごとに時計を見る |
まとめ:自主企画は「計算」と「共有」で9割決まる
- 自主企画ライブ=自分が主催者になって会場を借り、出演者を集め、当日を仕切るライブ
- 形式はハコ貸し・企画ノルマ・共同企画・箱との共催の4つ。初回は企画ノルマが安全
- 費用はキャパ100人で8〜20万円が目安。PA代・延長・機材が別料金かを必ず確認
- 損益分岐=総コスト ÷ チケット単価。キャパの7割を確実に埋められる箱を選ぶ
- 誘い方は日程・場所・条件・返事の期限を最初のDMに書く。条件はテキストで残す
- 主催が配る書類は香盤表・タイムテーブル・セット図と回線表・進行台本の4点
- 当日は受付・物販・撮影を人に任せ、主催は時間管理に集中する
自主企画は、赤字のリスクを背負う代わりに、誰と、どんな順番で、いくらで、どんな夜をつくるかを全部自分で決められるライブです。1回やると、ブッキングライブの見え方まで変わります。まずは小さい箱で、確実に埋められるサイズから始めてみてください。